クラック中級者が考える”クライミング用カムの選び方・揃え方”【決定版】

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 アルパインクライミングやクラッククライミング,沢登りや冬期クライミングなど様々な場面でクライマーの強い味方になっているカムですがいざ購入するとなるとどれをかっていいか迷ってしまいます.今回の記事ではクライミングの初中級者向けにクライミングカムの種類やそれぞれの特徴,また選び方などを筆者の経験をもとに紹介していきます!!

 話を始める前に少しだけ自己紹介をしておくと筆者はいわゆる中級者クライマーです.このくらいのレベルの人が書いているんだなーくらいのやさしい気持ちで参考にしてみてください.

筆者の情報
  • クライミング歴4年
  • アルパインクライミングとフリークライミング比 6:4
  • スポートルートとトラッドルート比 5:5
  • トラッド最高グレード 5.13a
  • トラッド完登ルート数 113本(5.12台7本,5.11台20本,5.10台54本,5.9以下32本)

クライミングカム

 クライミングをする上で命を守るために必須のプロテクションですが,回収可能で自然にやさしいナチュラルプロテクションのひとつがカムです.現代のクライミングにおいてはカムは第一に選ばれるプロテクションになる場面も多く岩のルートでは絶大な信頼を置くことができます.そんなカムも時代の流れとともに様々な種類が手に入るようになり,いざ手に入れようとすると何を買えばいいか迷ってしまいます.

カムの種類と所感

 この項では現在一般的に入手可能なカムの種類とそれぞれの所感について紹介していきます.

キャメロット(ブラックダイヤモンド)

 ブラックダイヤモンド社のキャメロットはもっとも見る機会が多いカムでしょう.旧タイプも入れればさらに多くのモデルが発売されていますが現在主流なものはC4,C4 UL,Z4でしょう.

C4

 キャメロットC4は一番ベーシックなモデルです.#0.3~#6(#7,#8もあるが入手難易度高い)まで広いサイズで発売されており汎用性が高く流通量も多いため同一モデルで揃えやすいです.現行モデルは旧モデルよりも10%軽量化されており使い勝手も良好です.オフウィズスサイズのカムはC4一択でしょう.持っている人が多いため,友人から借りる時などは必然的にキャメロットになることが多いでしょう.そのため使い方は習熟しておいた方がよいカミングデバイスです.

ウルトラライト(UL)

 ULはC4をベースにステムのダイニーマ化やカムローブの肉抜きなどで平均して20%ほど軽量化されているモデルです.#0.4~#4までの比較的使用頻度の高いサイズが展開されており軽量化が重要な山行ではおすすめです.一方で価格もC4よりは高めに設定されています.

 フリークライミングのプロテクションとして使用する分にはあまり気になりませんが,筆者がエイドクライミングでビッグウォールを登ったときにはULの方はローブについているワイヤーが切れました.この部分の強度はやはり通常のC4おりは劣る印象です.

Z4

 Z4はマイクロサイズのカムで#0~#0.75まで展開されています.#0~#2までは一軸性で,#0.3以上は二軸のカムになっています.ステムのフレキシビリティが高く様々な場面で役立ちます.安定感がありこのサイズのカムの主戦力です.

マスターカム(メトリウス)

 マスターカムはメトリウスから発売されているカムで,キャメロットの次くらいにみる機会が多いでしょう.一軸性のカムでキャメロットとの使い分けが可能です.サイズとしてはキャメロットの#0.1~#3くらいまで展開されています.サムループがないのでスムーズにセットするには慣れが必要です.ただシンプルなつくり故軽さはキャメロットULをしのぎます.価格も3割ほど安いので選びやすくなっています.

エイリアン(FIXE)

 エイリアンはキャメロットでいう#0.1~#0.5くらいまでのマイクロサイズを展開しています.ステムのフレキシビリティはZ4やマスターカムよりも高く場面を選ばずに使うことができます.しかし,残念ながら現在は日本での流通量が少なく入手難易度は高めになっています.筆者は少しウォーキングしやすい印象を受けます.

トーテムカム(トーテム)

 トーテムカムは比較的新しいタイプのカムで従来とは全く違う構造をしています.そのおかげで静荷重なら片刃でも使用できたり,ウォーキングしにくかったりなど従来モデルとは異なる場面で出番があります.キャメロットが効かない場面でトーテムが効いたり,その逆もあるため1セット持っているとプロテクションの選択肢が広がります.

フレンズ(WILD COUNTORY)

 フレンズはもっとも古いカムでクラシックルートの記録を見るとよく見かけます.以前は一軸性でキャメロットとのすみ分けもできていたようですが,最新モデルは二軸性になりキャメロットの陰に隠れてしまっているのが実情です.岩場では時々見かける程度です.使用したことがありません.

ニューフレックスカム(TRANGO)

 みんな大好きモンベルで購入可能なカムです.一軸性のカムですが機能的な強みはわかりません.価格が他のカムよりも安くなっています.

ドラゴンカム(DMM)

 すみません.あまり情報がありません.

①用途ごとのおすすめカム

 ここまで現在入手可能なカムの種類と所感を簡単に説明してきました.ここからは用途別におすすめできるカムを紹介していきます.

アルパインクライミング

【おすすめ】キャメロットウルトラライト

 まずアルパインクライミングに関してですが,ここでは無雪期の山岳域でのクライミングのほかに冬壁や沢登りなども含めておきます.

 クライミング全般において軽量化は必須項目ですが,ギア一式や,食料,水,時には幕営具も背負って行動するアルパインクライミングではフリークライミング以上に軽量化が求められます.一方でクラッシックルートと言われるようなピッチグレードがⅤ級以内におさまるようなルートでは比較的安定した状態でカムセットができるため「セットのしやすさ」自体はそこまで重要ではありません

 これらの点から考えると1セットで100gほどの軽量化ができるキャメロットウルトラライトがおすすめです.実際筆者もアルパインの時にはウルトラライトを持っていくようにしています.マスターカムも軽量であり候補ですが冬のアルパインなどグローブをつけている場合には操作性は若干劣ります.

フリークライミング

【おすすめ】キャメロットC4,Z4,トーテムカム,マスターカム(マイクロサイズ)

 続いてフリークライミングですがこちらに関しては登るルートに応じてというのが正直なところです.瑞牆や名張,ヨセミテなどの40m近いロングルートの場合にはカムを大量に持っていくため軽量化にもこだわる必要がありますがこれらのルートはどちらかというと少数派です.一般的なトラッドルートであれば軽量化よりも「セットのしやすさ」あるいは「安定感」を重視する方がよいでしょう.アルパインでおすすめのキャメロットULはフリークライミングでは出番は少ないかもしれません.

 「セットのしやすさ」でいえばトーテムカムに軍配が上がります.キャメロットシリーズも比較的セットはしやすいですが,時折サムループに指を入れるのが煩わしく感じるときがあります.#0.75~3などの安定してジャミングができるサイズであればキャメロットで何ら問題ありませんが,苦手なサイズはトーテムカムがあると心強いです.また後述しますがキャメロットでいう#0.2以下のサイズにおいてはマスターカムが安定感があります.

②サイズごとのおすすめカム

 ここからは各サイズごとのカム選択について言及していきます.現時点で筆者のおすすめは下記のとおりです.

マイクロカム(極小)

【おすすめ】マスターカム,トーテムカム

 指も入らないようなサイズ,キャメロットでいう一軸になる#0.2以下のサイズです.このサイズでは全体的に強度は落ち安易な墜落は避けるべきです.しっかりとセットしても抜ける,あるいはカムが壊れることもあるため,もしこれよりも大きいサイズでカムがセットできる場合にはそちらを選択する方が無難です.とはいえセットせざるを得ない場合もあります.

 現実的な選択肢としてあるものはキャメロットZ4,マスターカム,メトリウスTCUなどがあります.TCUに関しては使用経験がないので触れられないのですが,キャメロットとマスターカムでは後者に軍配があがります.強度はどちらも5kN(厳密にいうとZ4 #0.2は6kNなのでやや強い)であまり変わりませんが,トリガーの引き加減がマスターカムの方がよいです.これは感覚的なものになりますが,筆者の周りでもマスターカムの方が引きが良いという人が多いです.

 またキャメロットZ4 #0.2よりも若干大きいサイズとなり単純な比較はできませんが,トーテムカムの黒は上記2つと比べ安定感が半端なくよく必携の一本です.

その他の選択肢①ナッツ

 ここではマイクロカム(極小)の紹介をしましたが,このサイズでの選択肢としてナッツがあります.セットできる場所を選ぶ必要があり汎用性は下がりますが実はマイクロカム(極小)よりも強度が高く十分選択肢となります.

その他の選択肢②ボールナッツ

 またナッツだけではなくカンプやトランドが出しているボールナッツも選択肢となります.ボールナッツはカムやナッツよりもさらに細いところに設置が可能で一番小さいサイズでも7kNの強度があります.これを使いこなせるとマイクロサイズでのプロテクションの選択肢が一気に増えます.

マイクロカム(小)

【おすすめ】キャメロットZ4,トーテムカム

 続いてはマイクロカム(小)サイズですが,このサイズは一般にフィンガークラックといわれるものでキャメロットでいう#0.3~0.5あたりです.ここまで広がると安心して落ちることができます.選択肢としてはキャメロット,マスターカム,エイリアン,トーテムカムなどです.いずれも一長一短ありますが筆者としてはキャメロットZ4およびトーテムカムを好んで使います.やはり一軸のカムと比べるとセットしたときの安定性が変わってくる印象があります.またキャメロットの場合はナッツ的な使い方ができるのも強みです.マスターカムの方が安定する場面ももちろんありますがサムループがないので少しセットに手間取ることもあります(筆者の技量の問題かもしれませんが..).

一般的なサイズ

【おすすめ】キャメロットC4

 一般的なサイズとしていますがシンハンドジャムが決まってくるくらいのサイズでキャメロットでいう#0.75-3くらいを指しています.このサイズではキャメロット,マスターカム,トーテムカムなどが選択肢となりますが筆者はキャメロットを使う場面が多いです.比較的安定してセットできるサイズなのであまり違いを感じられないです.

大きなサイズ

【おすすめ】キャメロットC4

 大きなサイズはいわゆるオフウィズスと割れるもので#4以上のものですがこのサイズだと手に入りやすさを考えるとキャメロットC4一択となるでしょう.

【決定版】はじめてのカム・カムの揃え方モデルケース

 最初にカムを買うときに何を買えばいいか非常に迷います.これまでにケースごとのおすすめのカムを紹介してきましたが実際にどのようにカムを揃えればいいのでしょうか.ここでは一つのモデルケースとして「もし筆者がカムを1つも持っていなかったらどの順番で揃えていくか」を紹介します.

 筆者のおすすめはアルパインをメインでやるにしろ,フリーをメインでやるにしろ

「キャメロットC4を軸に買い足していく」

です.やはりキャメロットC4の総合力の高さは他のカムを圧倒しています.機能性,重量,価格などなどバランスが取れている良いカムで最初に買うカムとしておすすめですし1セットは持っておきたいカムになります.

 ですがマイクロサイズにおいてはC4はベストではありません.Z4があるサイズ(#0.3~#0.75)ではZ4の方がおすすめできます.なので現状は

「キャメロットC4を軸に,Z4があるサイズ(#0.3~0.75)はZ4を買う」

 また#0.2以下のサイズではマスターカムの方が安定感はあるでしょう.とはいえ初めて買うときに#0.2以下のマイクロサイズが必要かという議論は残ります.これらのカムは5.11台中盤以降の課題を触るようになって出てくるサイズなのでおいおい買い足していく方針で問題ないと思います.これはオフウィズスサイズに関しても同じことが言えます.

「#0.2以下のマイクロサイズ,#5以上のオフウィズスサイズに関しては必要になったら買う」

 長いルートをやる場合に1セットのカムでは足りない場合もあります.2セット目以降はどのように揃えればよいのでしょうか.このくらいになると経験を積んで自分に必要なものを選べるようになっていると思いますが,一応筆者のおすすめを言っておくと

「2セット目以降はアルパインをやるならばキャメロットUL,フリー主体ならトーテムカム

です.2セット目以降は1セット目と同じものではなく,1セット目を補完する形で揃えるのが良いと思います.そのためアルパインクライミングをする人であればアルパイン用にウルトラライトを買うのもありだと思います.またフリー主体の人はトーテムカムがおすすめです.トーテムカムはそれまでのカムとは一線を画しており,キャメロットが効かないところで効くこともあるため1セットもっていると選択肢が大幅に広がります.使いだした今としては「なければ困る」カムであることは間違いありません.

まとめ

 ここまでいろいろ述べてきましたが,いずれのカムも強み弱みがありますし場面で使い勝手が変わってきます.そのあたりの感覚であったり好みであったりは使ってみて初めて分かることも多いのでカム選びは難しいです.この記事に書いてあることはあくまでも筆者の所感になりますが,少しでも参考になれば幸いです.

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