オリンピック競技にもなり昨今人気のスポーツといっても過言ではないスポーツクライミングですが,その裏で静かなブームとなっているアクティビティがあります.それがクラッククライミングです!!
そんなクラッククライミングですが,やっていくといくつか成長の壁にぶつかることがあります.よくその壁の中のひとつとされるのが「フィンガークラック」です.一般的にクラックは細くなるにつれてジャミング,プロテクションのセットともに難易度があがる傾向があります.
筆者が住んでいる東海エリアには小川山や瑞牆などクラックもある大きなエリアがあるわけではありませんが,小-中規模ながら瑞浪や豊田には質の良いフィンガークラックの課題がそろっており東海のクライマーはこれらの課題でフィンガークラックの技術を学んでいきます!
今回は,東海エリアにあるフィンガークラックの課題について紹介していきます.東海圏内のひとはもちろん,東海圏外のひとも触りに来る価値のあるルートです!!
目次
おたまじゃくし 豊田天ヶ峰 ~フィンガークラック基本の「キ」~
まず最初に紹介するのは豊田の天ヶ峰と呼ばれるエリアにある”おたまじゃくし”というルートです.

”おたまじゃくし”はフィンガークラックなのに5.8という非常に珍しいルートで,出だしの5mほどがフィンガーサイズのクラックでそこから上部は易しいフェイスクライミングになります.フィンガー部分はキャメロットでいう#0.3-0.4といった一般的なサイズのフィンガークラックです.
#0.3-0.4のサイズはフィンガークラックの中で一番遭遇する場面が多く,このサイズのクラックにジャミングができないとフィンガークラックは登れないといっても過言ではありません.別の視点からいうと一度ジャミングのテクニックさえ習得してしまえばしっかりと効くサイズでもあり快適に登ることができます.

”おたまじゃくし”は,手はフィンガージャムが求められますがフェイス部分に足を置けるスタンスが豊富にあり,基本的なフィンガージャムに集中して練習することができます.またジャミングを決めた状態でのプロテクションセットも求められるのでこちらもよい練習になります.
- 基本的なフィンガージャム(#0.3,#0.4サイズ)
- 基本的なプロテクションセット
秀則コーナー 瑞浪 ~コーナーでの足づかい~
続いて紹介するのは瑞浪屏風岩の”秀則コーナー”というクラックです.
このルートですが,かつて秀則君という小学生でも登ることができたということからこんな名前になっています.ステミングで登ることもできる課題ですが,クラックを使って登るとよい練習になります.

”秀則コーナー”はその名の通りコーナーにあるクラックで#0.3‐0.4を中心としたサイズとなっています.コーナーやオフセットしたクラックにフィンガージャムを決める場合には必然的に片方が順手,片方が逆手となります.ここではこのようなフィンガージャムを練習できます.
またクラックは足をきめるには狭く,コーナーを利用したトゥジャムがきまらなくてはこの課題を登ることができません.このトゥジャムは慣れれば快適そのものであり必修技術です.この課題はトップロープもかけやすいので繰り返し練習しましょう.
- コーナーフィンガークラックでのフィンガージャム
- コーナーフィンガークラックでのトゥジャム
思いやり 瑞浪 ~必修科目:ボトミング~
瑞浪はクラック資源に豊富な岩場で”思いやり”というルートもフィンガークラックの練習ができます.
この課題は全体を通してフィンガークラックの課題というわけではありませんがワンポイントフィンガージャムを求められます.ここできめるジャムがいわゆるボトミングのフィンガージャムと言われるものです.
ボトミングのフィンガージャムは最も易しいタイプのフィンガージャムであり,力を入れることなく体勢を維持することができます.そのため長いフィンガークラックのルートなどではレストポイントになったり,プロテクションをセットするポイントになったりするため必修の技術です.
- ボトミングでのフィンガージャム
ここまでは比較的易しめの課題を紹介しましたが,ここからは中級編となります.ただ,いずれの課題もトップロープはかけやすいのでリードに自信がない人はトップロープで練習しましょう.
雨蛙 豊田天ヶ峰 ~足技のデパート?ガタガタクラック~
雨蛙ノーマルというと豊田では人気のトップロープ課題ですが,傾斜の強い出だしから通しでクラックを登るのが”雨蛙”です.

”雨蛙”は5.11aのクラックですが,出だしはハングしており大変です.そこをこえるとフィンガークラックが続いています.一見きれいなフィンガークラックですが,近くで見るとオフセットしていたり,フレアしていたり,少し広いところがあったりなどがたがたしています.
フィンガークラックにおいては手のジャミング以上に足のジャミングが難しいことが多いですが,このようながたついたクラックでは場所を選ぶことで足のジャミングをきめられることがあります.オフセットした部分や,フレアした部分を見つけてトゥジャミングの練習をしてみましょう.
フィンガークラックではフェイスのフットホールドを使って登ることも重要ですが,足ジャムの選択肢もでてくるとより安定し登ることができるようになります.
- オフセット,がたついたフィンガークラックでのトゥジャム
アダム 瑞浪 ~足づかいが肝,結晶を拾え!~
東海のクラックといえばこれから紹介する”アダム”と後ほど紹介する”イヴ”が有名です.
”アダム”は先ほど紹介した”雨蛙”とはうって変わってきれいなスプリッタークラックです.

”アダム”はフィンガージャム自体は痛いほどよくききますが,その美しすぎるクラックゆえトゥジャムをきめるのがなかなか難しいです.傾斜が緩やかであればスメアで体をあげることもできますが,この課題の核心部分は薄被りでそれもなかなか楽ではありません.
そんな時にフェイス部分に目を向けると細かな結晶があることに気が付きます.”アダム”を登るにはこのような細かいスタンスを丁寧に使って登っていく必要があります.このようなフェイスクライミングの技術も,時としてクラックを登るのに必要になってきます.
- 足ジャムがきまらないフィンガークラックでの足づかい
- フィンガークラックでのトゥジャム
さて,いよいよここからは上級編です.とはいえこれから紹介する課題もトップロープでトライしやすいので気負わず触ってみるのもひとつの手かもしれません.
イマジン 豊田大田 ~ストレニュアスレイバック~
“イマジン”はこれまで紹介してきたルートと比べるとかなりマイナーな部類に入るかと思いますが,豊田で最高のクラックといっても過言ではない素晴らしいルートです.
豊田特有のかぶった出だしを終えると,95度ほどにうっすらと前傾したクラックが続きます.最後はクラックが閉じますが,それと同時に左に別のクラックが出現し最後はマントルを返して岩の頂上に立ち上がります.小川山や瑞牆にあれば三ツ星間違いなしの好ルートです.

このクラックは前傾に加えて部分的にクラックがフレアしていたり,オフセットしていたり,浅かったりなど真っ向勝負のジャミングがなかなかききにくいというのが特徴です.そのため自然とレイバックで登ることになります.フィンガークラックにおいては真っ向勝負のジャミングは必要不可欠ですが,時としてフェイスムーブやフェイバックなどの技を使うことで登りやすくなる場面も多々あります.
クラックをレイバックで登るときにプロテクションセットの難易度が上がるとということには注意が必要です.レイバックになるとカムセットの際にバランスを崩したり,時としてブラインドでセットしたりすることになるのでそれなりに慣れが必要となってきます.このクラックではこれらを練習することができます.
- フィンガークラックでのレイバック
- レイバックでのプロテクションセット
イヴ 瑞浪 ~フェイス技術を活かせ!~
いよいよこの項で紹介する最後のクラックになります.ここで紹介する”イヴ”は東海クラックの最終課題といっても過言ではありません.これをリードで登ることができればあなたはもうフィンガークラックの達人かもしれません.

”イヴ”を始めてみた時は「このクラック登れるの?」と思うことでしょう.核心部分はキャメロットでいう#0.1‐0.2と普通の人なら到底指が入らないサイズとなっています.
この指の入らないクラックを登るには”ジャミング”というものを一度忘れなければなりません.クラックの縁をカチ持ちし,時として観音開きみたいに両側からクラックの縁を持つことも必要です.そして足は積極的にフェイスのスタンスを使う方がよいでしょう.幸いなことにこの課題にはフェイスのスタンスが豊富にあり,それ故に5.11cというグレードに収まっているのでしょう.
またプロテクションも一筋縄ではいきません.”イヴ”は細いだけではなくがたついている部分もありプロテクションが効く場所が限られます.もちろん小さいカムがたくさんあればカムだけでも登れますが,ナッツやボールナッツなどほかの選択肢も持つことでより安全に登ることができるでしょう.
- チップフィンガークラックでのジャミング,ムーブ
- カム以外のプロテクションセット
その他
これまで紹介してきた以外にも東海エリアにはフィンガークラックの課題がいくつかあります.ここでは名前をあげるだけにとどめておきますが,ぜひエリアを訪れた際には触ってみてください.
- 自由人の悲哀 豊田天ヶ峰
- スウィートジャム 豊田天ヶ峰
- ロンリコ151 豊田天ヶ峰
- 一休 豊田
- KANNONクラック 豊田(※登攀自粛中)
また今回紹介した豊田・瑞浪以外にも名張や城ヶ崎,御在所などもフィンガークラックの課題があるのでこれらのエリアに行ってみるのも楽しいかもしれません!
まとめ
フィンガークラックは難しく最初は敷居が高いイメージを持ちがちですが,一度基本的な技術を身に着けるととても楽しく登れます.一見クラックの少ない東海エリアでもフィンガークラックの技術を習得することは十分可能ですのでぜひ食わず嫌いをせずにトライしてみてください!!
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