アルパインクライミングをしている人ならだれでも一度は北岳バットレスに登ってみたいと思います.またクライミングをやっていない人でも真正面から北岳の頂上にたどり着くこのルートは興味があることでしょう.
今回は日本第2位の標高をもつ北岳にあるアルパインクライミングルートである北岳バットレス,その中でも一番人気の第4尾根主稜について紹介していきます.
目次
北岳バットレス

日本第2の高さをもつ北岳には初心者から上級者まですべてのクライマーを魅了する岩壁があります.北岳に登ったことがある人は真正面にそびえる岩壁を見たことがあるでしょう.その岩壁こそが北岳バットレスです.
北岳バットレスは古くから登られており,現在でもその登りごたえと開放的なロケーション,多様な難易度から様々なクライマーに登られています.北岳バットレスの一番人気のルートと言っても過言ではない第4尾根は,初心者アルパインクライマーが最初に目指す目標のひとつでしょう.

北岳バットレスは第4尾根を代表とするメインのルートとその取付までのアプローチに使われる下部岩壁のルートがあります.
白根御池小屋をベースにした場合に下部岩壁取付まで2時間,下部岩壁登攀に1時間,第4尾根取付まで1時間と合計4時間かけてようやく取付までたどり着きます.
ですが,北岳バットレスには長い時間をかけてでも行く価値があります.
- Bガリー大滝
- Cガリー大滝
- 十字クラック
- 第5尾根支稜
- 第4尾根主稜(Ⅳ+)
- 第4尾根~中央稜(Ⅳ+)
- Dガリー奥壁(Ⅴ+)
- 上部フランケ(Ⅴ)
- 下部フランケ(5.10a)
- ピラミッドフェース(Ⅴ)
北岳バットレスをはじめとする多くのバリエーションルートが載っているアルパインクライミング定番のルート図集
↓↓↓
アプローチ~Bガリー大滝~第4尾根取付
北岳バットレス第4尾根に取付にはまず大樺沢左俣の登山道からB~C沢のいずれかを登り下部岩壁を登攀する必要があります.下部岩壁にはいくつかのルートがありますが,今回は第4尾根に最短で取付くことができるBガリー大滝の紹介をしていきます.

アプローチ~Bガリー大滝取付
左俣登山道を八本場のコルの方に30分ほど登ると左岸に巨大なボルダーが目印のB沢(バットレス沢)と合流します.B沢から30mほど進むと水が流れるC沢があります.

B沢とC沢の間の尾根の方に進みます.この分岐のあたりから右手に下部岩壁がみえ,Bガリー大滝も確認できます.下部岩壁の方に向かって,しっかりとついた踏み跡をたどると茂みの中,ガレ場と進んでいき30分~1時間ほどでBガリー大滝取付にたどりつきます.
Bガリー大滝~第4尾根取付

Bガリー大滝は左の方にあるクラック沿いにルートをとります.グレード的にはⅢ級程度で問題なく登れるでしょう.Bガリー大滝についてはロープを出さなかったり,登山靴で登っていたりする記録も散見されました.パーティの実力に応じて安全第一で登攀しましょう.
ビレイ点には古いハーケンが2本打ってあります.途中も要所要所で古いハーケンが打ってあるので強度を確認しつつ支点をとっていきましょう.

Bガリー大滝を抜けると草付きの踏み跡があるのでこれに沿って進んでいきましょう.正しいルートは左にトラバースですが,ガリーにも踏み跡がありここでガリーを詰めるのは間違ったルート取りなので注意しましょう.
トラバースして第2尾根の末端をこえるとCガリーに出くわします.Cガリーの対岸にいよいよ第4尾根がみえてきます.落石に注意しながらCガリーをやや上方に横断するとヒドンスラブがあります.
ヒドンスラブは最初の関係者の部分を登るとあとは踏み跡沿いに進み第4尾根取付のテラスにたどりつきます.


第4尾根主稜
第4尾根主稜は北岳バットレスの一番の人気のルートであり,また難易度もそこまで高くないためアルパインクライミングの経験が浅くても登ることができます.
ただし,出だしのクラック,4ピッチ目の三角形の垂壁,6ピッチ目の高度感のあるリッジ,城塞ハングなど登りごたえがあるピッチもあるのでしっかりとトレーニングを積んでから挑戦しましょう.

プロテクションは各ビレイ点ごとにリングボルトが,また要所要所で古いハーケンが打ってあるので強度を確認しつつ使っていきましょう.
1ピッチ目 クラック~緩傾斜のスラブ Ⅳ+~Ⅴ-

1ピッチ目の最初のクラックは斜度もあり,つるりとフリクションが効かない岩質なのでてこずる人は多いでしょう.ですが,フィストからオフウィズスのクラックでありフットジャムがしっかりきまれば5mほどのクラックを乗り越えればあとは緩傾斜のスラブになります.
2ピッチ目 緩傾斜のスラブ Ⅱ~Ⅲ/3ピッチ目 白い岩のクラック Ⅲ

2ピッチ目,3ピッチ目はクライミング自体はやや面白みに欠ける緩傾斜のスラブです.手・足ともにホールドが豊富で難なく登れるでしょう.
このピッチ自体のクライミング自体は多少物足りないかもしれませんが,後ろを振り返れば絶景が待っています.さらに核心である次のピッチへの期待感もあり心は踊ります.
4ピッチ目 三角錐の垂壁【核心】~高度感のあるリッジ Ⅳ+~Ⅴ


4ピッチ目には核心である三角形の垂壁があります.このパートの20mくらい手前にあるビレイ点からつなげてもいいですし,この岩の手前にはハーケンが山ほど打ってあるのでここで切るのも一つの選択肢です.
ほんの5mほどの垂壁ですがホールドやスタンスは細かく緊張感はあります.細かくランニングをとりながら登るようにしましょう.壁をこえると今後は両側がスパっと切れた高度感のあるリッジになります.さらに20mほど進むとマッチ箱の突端にある懸垂支点がみえてきます.
マッチ箱からの懸垂下降

マッチ箱の突端に懸垂支点があるほか,そのやや手前にも安定したビレイ点があるのでここでロープを解除して懸垂下降の準備をしましょう.
懸垂支点は古いハーケン2本に通してある捨て縄にカラビナがついています.捨て縄の強度を十分に確認ののち懸垂しましょう.
マッチ箱の左側のスラブにあるテラスへ15mほど懸垂下降します.
5ピッチ目 緩傾斜のスラブ Ⅳ

5ピッチ目はスラブまたは右側の凹角を登っていきましょう.途中からカンテ上の凹角になります.
6ピッチ目 高度感のあるリッジ~トラバース Ⅴ-

6ピッチ目は以前は枯れ木テラスにでるピッチでしたが,2010年の大規模崩壊後は高度感のあるスラブをリッジをもちながらトラバースしていきます.
リッジに上がる際に一手だけダイナミックなムーブが要求されますが,その他の難易度は高くなく高度感との戦いになります.特に最後のリッジをもちながらのトラバースは足がすくむほどの高度感です.
左正面に見える城塞ハングの手前でピッチを切ります.ここでDガリー奥壁ルートと合流します.
7ピッチ目 城塞ハング Ⅳ~Ⅳ+

城塞ハングは垂直なチムニーです.中に入ると安定感はありますが,とても窮屈になるため高度感はありますが体を凹角の外に出しながらダイナミックに登っていきましょう.途中に残置カムがありますが,今まで多くの人が回収を試みては失敗しています.
城塞ハングを抜けて緩傾斜のスラブを登ると安定した終了点に到着します.ここから10分ほどで一般道と合流,さらに10分ほどで北岳山頂に到着します.最後まで気を抜かずに頑張りましょう!!
まとめ
人気のクライミングルートである北岳バットレス第4尾根について紹介してきました.
簡単なルートではありませんが,しっかりと練習すれば初心者でも挑戦することができる魅力的なルートです.まだ登ったことがない人はぜひ一度登ってみてください!!


コメント