リアル・マウンテンドクター|山岳医療と国際山岳医(DiMM)への道

医療
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 山でけがをしたとき,急病になったとき,あるいは今の自分の健康状態で憧れの山にいけるか不安なとき,あなたはどうしますか?

 そんな登山者の悩みを解決するヒントを与えてくれるのが山岳医です.

 山岳医と呼ばれる人々については以前もまとめたことがありますが,今回はその中で紹介した国際山岳医(DiMM:Diploma in Mountain Medicine)について紹介していきます.山岳医は志す人には参考になるように,医療者以外の登山者にはこういう人がいるんだなーと思っていただけるような内容にしています!

国際山岳医(DiMM:Diploma in Mountain Medicine)とは?
  • 山岳地域における医療専門的なトレーニングを受けた医療者
  • 国際的な基準に基づくカリキュラムを修了している
  • 医療行為のほかにもロープワークや基礎的な救助行為も心得ている
  • 国際山岳看護師も存在する
  • 現時点で国内に医師約50人,看護師約40人いる

マウンテンドクター(山岳医)の必要性

 2024年現在,アフターコロナと言われる世の中になりコロナ禍に低下した登山人口は再び増加してきています.それに伴って山岳遭難をはじめとする山に関わるトラブルも増えてきています.登山者の健康管理や山岳地域での疾病対応などに関わる山岳医療者の需要は増加するものと思われます.2024年7月にはフジテレビ系で「マウンテンドクター」という山岳医療者のドラマも放映されるほどです.

 ちなみに,ここでは山岳医とひとくくりにしていますが,実際には看護師,理学療法士,救急救命士など様々な医療従事者が山岳医療活動を行っています.

 山岳医療者の需要は高まることが見込まれますが,実際のところ世の中での認知度は低いのは問題点のひとつです.活動内容は多岐にわたりますが,以下のものは比較的中心的なものになるかと思います.山岳医というと山の中での活動に目が行きがちですが平地での活動もたくさんあります.

  • 山岳地域での診療,救助活動への関与・助言
  • 有疾病者の登山前のリスク評価,健康管理
  • 山岳医療に関する知識の啓蒙
  • 集団登山や海外遠征隊への随行
  • 山岳スポーツ大会の医療班
  • 山岳医療の基礎・臨床研究
  • 山岳医・山岳看護師の教育       etc

 そんな数ある山岳医療従事者の活動の中でスポットライトがあたるもののひとつとして山中での医療活動があります.山中での医療活動を行うにあたっては特に必要な資格はありませんし,究極的なことをいえば医療者でなくても行うことができます.しかし,世の中には山岳地域での医療活動の特別なトレーニングを受けた医師・看護師がいます.それが国際山岳医/国際山岳看護師(DiMM:Diploma in Mountain Medicine)です.

国際山岳医/国際山岳看護師(DiMM:Diploma in Mountain Medicine

 DiMMは国際山岳連盟医療部会,国際登山医学会,国際山岳救助委員会から承認を受けているプログラムでこれを修了し検定に合格すると授与されます.2010年ころより日本に導入されており2024年時点で医師約50人,看護師約40人,救急救命士1名が所持しています.

 DiMMを持っているということは山岳地域での疾病・外傷に関する理論と対応について心得ているということを意味し,日本では国際山岳医・国際山岳看護師と呼ばれています.DiMMを取得するには合計100時間を越える座学,演習を受け,一定基準を持つ検定に合格する必要があります.ここではその内容について簡単に紹介していきます.

座学

 座学では山中の疾病対応や気象,災害の知識,高山病などの一般的な高所医学や冬山ならではの低体温症や凍傷などのマネジメントを学びます.受講すれば終わりではなく,理解度の確認やケースごとの机上訓練などの事後課題も合格する必要があります.コロナ禍の影響もあってe-learningで受講するものもあります.

演習

 演習は夏山演習,冬山演習があります.夏山演習では基本的なロープワークを確認した後に,3分の1引き上げシステムやフリクションコードを用いたユマール,救助場面を想定したロールプレイなどを行います.ロールプレイでは自身の山行や,日常の医療活動,座学などで得た知識経験をもとに事前に設定された様々な場面をシミュレーションしていきます.冬山演習では実際の冬山で低体温や凍傷などのマネジメントを確認していきます.

検定

 検定では演習内容をベースに山岳エリアで安全に行動できる知識・技量があるかを本職の山岳ガイドによって確認されます.検定のレベルとしては決して高レベルなものではなく,基本的なものをより確実にできるかどうかを求められます.普段からロープを使った山行をしている人であればそれほど難しく感じないかもしれません.

その他:学術集会への参加,ICLS・ACLSなどの心肺蘇生コースの受講,更新

 その他に年1回行われる学術集会への参加や,心肺蘇生コースの受講なども必要で,さらに取得したあとも5年間に1回の更新があり継続的な山岳活動・医療活動を行っていく必要があります.

所感

 全体として極めて難しいプログラム!というわけではありませんが,ベーシックな技術は確実にできることが必要です.技術に関しては演習で確認できるものの時間は限られるため初めてそこで学ぶという姿勢では難しいそうです.受講のラインとしてはある程度自身で夏山冬山問わずロープを使った山行にいっていることが望ましいなと思います.また演習・検定は団体行動なのでチームでのコミュニケーションがとても大事になってきます.そして何より膨大な時間,決して安くはない費用が掛かるため高いモチベーションが必要になってきます.しかし,そのような人にとっては実りあるプログラムであることは間違いなく超おすすめです!

まとめ

 今回は山岳医療の概要と国際山岳医/山岳看護師になるためのプログラムについて紹介してきました.決して多くはない人数でだんだん増えていく需要をまかなっているのが現状で,山岳医療のシステムとしてはまだまだ未成熟な段階かと思います.このような人々がいることを知っていただけたら幸いです!

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