スコ―ミッシュはカナダにある都市で近郊の岩場では夏でも快適にクライミングを楽しむことができるためシーズンになると多くのクライマーが当地を訪れます.
日本の岩場と比べると規模は大きく,中でも日本には数少ないスケールの大きなマルチピッチクライミングは特徴のひとつです.
そんなロングマルチの中でビッグウォール入門ともいえる立ち位置にあり,世界最大級の花崗岩の一枚岩であるThe Chiefのど真ん中にある超おすすめルートがThe Grand Wallです.このページではThe Grand Wallについて紹介していきます.

目次
スコ―ミッシュ-Squamish
スコーミッシュはカナダ南西部にある街で,カナダ第3の都市圏であるバンクーバーから車で1時間ほどの場所にあります.ここでは日本が夏真っ盛りの8月でも心地よくクライミングができ,多くの日本人クライマーがシーズンになると訪れます.
スコ―ミッシュは花崗岩の岩場でスポート,クラック問わず多くのショートルートやマルチピッチ,あるいはボルダリングなどジャンルを問わずクライミングを楽しむことができます.一度は聞いたことあるようなCobra CrackやDreamcather,Freewayなどの課題もこの地にあります.


The Grand Wall
The Grand Wallはスコ―ミッシュを代表するマルチピッチの1本で,Chiefの花形であるThe Grand Wallにありその壁の名前がそのままルートの名前になっています.

8ピッチで構成されるルートで最大グレードは5.11aでこの手のロングマルチの中では比較的取付きやすいグレード帯となっています.途中2か所ほどボルトラダーをA0で抜けることになりますが,それを踏まえてもスコ―ミッシュで最もおすすめできるマルチピッチの1本です.前後のマルチピッチと継続することでThe Grand Wallの基部からChiefの頂上まで継続して登ることもできます.
瑞牆のベルジュエールをはじめとして日本にもロングマルチピッチはありますが,これらの多くは歩きのピッチも多く1つの壁を登っているという印象はあまりありません.しかし,このルートは完全に1枚岩の壁を登るマルチであり日本では味わえないクライミングを楽しむことができます.これを登るためにスコ―ミッシュまで行く価値があるといっても過言ではありません!!
アプローチ
The Chiefの基部にはいくつもの整備された道(トレイル)があり,The Grand WallにはGrand Wallトレイルを歩きます.駐車場から整備された道を5分,林の中の登山道を20分ほど進むとThe Grand Wallの基部に到着します.

筆者たちは誤ってFreewayトレイルの方から入ってしまいましたが,岩壁基部をトラバースすることによって無事に目的地に到着しました.

The Grand Wall自体の取付きは岩壁基部からさらにFlake Escape Ledgeと呼ばれるⅢ級程度の道を登ったところにありますが,このレッジを行く以外にも2ピッチ程度のクライミングをして本当の基部から取付くことも可能です.
筆者たちは”Apron Strings”という2ピッチのルートを登ってThe Grand Wallの取付きに向かいました.そのほかにも隣の”The Flake”という2ピッチのルートもアプローチに使えます.
Apron Strings 5.10b 2P
Apron StringsはThe Grand Wallのアプローチ的な意味合いのルートですが,実はそれ自体がスコ―ミッシュのトポの厳選ルートである100 selectに選ばれている面白いルートです.
1ピッチ目は綺麗なコーナークラックをレイバックで奮闘的に登ります.ちなみに筆者が訪れた際はコの終了点にハチの巣があって猛攻撃を受けたので要注意です.

2ピッチ目は同じくコーナークラックからスタートし途中からはきれいなジグザグのクラックを快適なハンドジャムで登ります.どちらのピッチも十分長さがあり充実します.

ルート紹介
ここからはいよいよThe Grand Wallのルートの内容を紹介していきます.人気ルートなので先行パーティがいると待ち時間が発生し思わぬ苦戦を強いられるかもしれないので早出必至です.またこの壁自体が昼過ぎくらいから日が当たりだすのでそういう意味でも早めのスタートをおすすめします.
1P目 5.8
The Grand Wallは出だしは緩傾斜帯ですが,途中から壁の傾斜が強くなります.
1P目スラブ帯に入ったダイクを登ります.ホールド,スタンスともに顕著で易しいピッチですが,30mのルートにボルト3本しかなくナチュラルプロテクションも使えません.とく1ピン目までは猛烈なランナウトなので確実なセルフコントロールが必要です.

2P目 5.9
2ピッチ目も1ピッチ目同様に緩傾斜帯を登ります.1ピッチ目の終了点から引き続きダイクを登り,2ピン目から右にトラバースしていきます.途中フレークを経由し,最後にあるスラブのトラバースに5.9のグレードがついています.

3P目 5.10b A0
3ピッチ目は壁の傾斜が変わる境目をややクライムダウン気味にトラバースしていきます.ある程度下がると今度は右上気味に登っていき,最後はボルトラダーをA0で登ってい立ち木のある小テラスを目指します.ホールドは豊富ですが,トラバースということもありリードもフォローも緊張します.

4P目 ”Split pillar” 5.10b
4ピッチ目は”Spilit pillar”という名前が付けられているThe Grand Wallのハイライトの1つです.
30mを越えるきれいなコーナークラックでシンハンド~ハンド~ワイドハンドへと比較的快適なサイズが続きます.後半は傾斜も強くなり快適なサイズながら奮闘的なピッチです.最後にはダメ押しのスクイーズチムニーを経て,快適なテラスに上がりピッチを切ります.

5P目 ”The Sword” 5.11 A0
5ピッチ目はThe Grand Wallの中に2つある5.11台のピッチで核心の1つです.前ピッチに引き続きコーナークラックですが出だしはサイズも細く必然的にレイバックになります.その後核心である高度感のあるフェイスを過ぎたら再びコーナークラックに戻ります.

この最後のコーナーは0.75サイズと決して悪くはないのですが入り込むのは苦しく,レイバックで一気に登るのがいいかもしれません.小ハングの上にはボルトラダーが続いており最後はA0でレッジまで登ります.
6P目 ”Perry’s Layback” 5.11a
前ピッチに引き続き閣員ピッチのひとつです.個人的にはこちらの方が難しく(苦しく)感じました.
頭上にある巨大なフレークの下にはキャメロットでいう5番くらいのサイズの隙間が広がっています.この隙間はとてもワイドクラックとして登ることはできず,フレークの縁をもってパワフルなレイバックで登っていくのが一般的です.手足ともにパンプと戦いながら右上していくと,フレークの抜け口でチムニーとなりようやくここで一息付けます.

プロテクションも大きなカムは使わず,フレークの下にボルトが連打してあるのでスポートルートとして登っていけます.
7P目 5.10a
4~6ピッチ目でThe Grand Wallのハイライトである3ピッチは終わりましたが,まだまだ気は抜けません.
7ピッチ目は”The Flats”と呼ばれる広いテラスのトラバースから始まります.10mほどトラバースすると本格的なクライミングになり,広がるスラブの中からホールドを探しながら登っていきます.最後にリーチな核心を越えると再びテラスになり残すは1ピッチのみとなります.この核心は人によってはデッドかランジになるかも?

8P目 5.10c
いよいよThe Grand Wallの最終ピッチです.頭上にある右に大きく張り出したフレークを,またもやレイバックで登っていきます.
核心は上部かと思って取付くと案外離陸も苦労します.後ろにある立ち木にもチョークがついており,こちらも使われた形跡が残っています.アンダーレイバックで越える核心は短いですが,これまでにたまった疲労感もあり思ったよりも難しく感じるかもしれません.フレークの端までくればあとは簡単です.Berygood LedgeまであがればThe Grand Wall完登です.

デプロ―チ Berygood Ledge
The Grand Wallは終了点となるBerygood Ledgeで終了となりますが,このあとRoman ChimneysやUpper Black Dykeなどに継続することで壁のさらに上部を目指すこともできます.

Berygood Ledgeは幅50cm~1mくらいのレッジで所々バランスの悪い部分もあり念のためロープを繋いで進んでいく方がいいでしょう.最後にちょっとしたクライムダウンをこなし樹林帯に入るとあとは歩いて降りることができます.基本的には踏み跡がついているので迷うところは少ないですが,途中スラブに入るところが見落としやすいかもしれません.最後はしっかりと整備されたトレイルと降りていくとChiefのキャンプ場に到着します.
まとめ
The Grand Wallはいわゆるビッグウォールの入門的な立ち位置にあるルートで,日本ではなかなか経験できないような長大なスケールを味わうことができます.スコ―ミッシュに行く人はぜひ登ってほしいですし,このルートを登るためにスコ―ミッシュに行く価値も十分にあるおすすめのルートです.




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