こんにちは!にわかアルピニストです.
みなさんは岩場に行くと絶叫しながらトライをしているクライマーを見たことがありますか?何を隠そう筆者もそんな絶叫系クライマーのひとりです!
今回はそんなクライミング中の絶叫(シャウト)について考えていきます.
アスリートは声を出す
絶叫するクライマーというと誰を思い浮かべますか?
筆者は絶叫系クライマーの第一人者として最強のクライマーのひとりでもあるアダム・オンドラ氏を思い浮かべます.
彼を知らない人はぜひ一度この動画を観てください!この動画を見れば,“絶叫系=アダム”という図式に合点が行くと思います.
もう少し視野を広げてみるとクライミング以外のスポーツでもシャウトするアスリートは少なくありません.
日本を代表するオリンピアンである室伏広治氏などはその代表格でしょう.
では,彼ら(我々)は何故絶叫するのか?クライミングをするときはシャウトしたほうがいいのか?これらについての科学的な知見をいくつか紹介しつつ戦略的なシャウトについて考えていきます.
シャウト効果
先ほども述べたようにアスリートはシャウトします.これは経験的に声を出した方が力が入ることを知っているからですが,実はこのことについては数多くの研究がなされて科学的にも実証されています.

これらの研究ではシャウトすることで最大筋力が十数%ほど増加すると報告されているものが多いです.このシャウトは筋肉そのものに作用するというよりは脳などの中枢神経系を興奮させ,ここからの出力を増大させることで筋力を増強させると考えられています.つまり”リミッター解除”です.日本では”火事場の馬鹿力”といった方がわかりやすいかもしれません.
さらにこの効果は疲労時にはより強く発揮されるという報告もあります.


クライミングは前腕はじめ全身に連続的に負荷がかかるスポーツであり,多くの場合で疲労が溜まった状態で強度の高い動きをすることが求められます.そういう意味では疲労時により強く発揮されるというシャウト効果の特徴はクライミングにとてもマッチしています.
叫ぶことは呼吸をすることである
表面だけをとらえるとシャウトは叫ぶことですが,叫ぶためには息を吐く必要があります.つまり別の見方をすると”叫ぶ=呼吸(呼気)”ともいえるのです.次はこの観点からシャウトの有効性を考えていきます.

人は息を吸うときには動けない
筆者は学生時代に剣道をやっていましたがその時に教わったことの一つに
”息は短く吸って長く吐け”
というものがありました.この言葉の深意は
”人は息を吐いているときには動けるが,息を吸っているときには急には動けない”
ということでした.これは剣道ではなくてもスポーツをやったことがある人であれば経験したことがあるかもしれません.この経験則を踏まえると,息を吐く行為でもあるシャウトは効果的な可能性があります.
息を吸う瞬間に集中力がさがる
2022年に兵庫医科大学の研究グループが一つの研究を発表しました.その研究ではヒト脳活動を経時的に3D撮像できるfMRIという機械を使って,息を吸う瞬間に「脳の中ではどのようなことが起こっているのか」を調べています.
具体的な方法を簡単にまとめると,呼吸を感知する装置を鼻につけた状態で最初に提示された見本を記憶して,そのあとに提示されたものが記憶したものと同じ画像が提示されたかどうかを確認する実験です.その結果,記憶想起の際に息をするタイミングが入り込むと,fMRI上で脳の活動が低下していることが確認されました.

彼らはこれらの研究を以下のように総括しています.
ヒトは息を吸う瞬間に集中力・注意力が途切れてしまい、その結果、記憶力の低下、さらには、判断力低下など、さまざまな認知機能の低下を引き起こすことが考えられます。
逆に考えると集中力を低下させたくない時には息を吐く,つまりシャウトすることが効果的な可能性があります.
戦略的シャウトとは?
ここまでスポーツにおけるシャウトの意義について考えてきました.これらがクライミングのシーンにおいても活用できるのは言うまでもありません.
実際にクライミング中にシャウトする人は多いと思います.このシャウトをより戦略的に行うことで目標とするルートの攻略はより近づくのではないかと筆者は考えます.
一つのルートの完登を目指す際に戦略を立てる人は多いでしょう.核心はどこなのか,核心のムーブはこうしてああして,レストポイントはここで,クリップはここでして,などなど.さらにこれらの情報を統合してイメージトレーニングを行う場合もあります.
その戦略の中に自発的に行うシャウトを入れ込んでみてはどうでしょうか?

高強度と思われる核心部分で声を出すことの効果はこれまでに触れてきたとおり自明です.自身の100%以上の力を引き出し,集中力を高めます.自分の力を底上げするこのシャウトを前もってプランに取り込んでおくことで多少の余力が生まれ核心が攻略しやすくなるかもしれません.レストやムーブなどと同様に事前にプランの中に組み込んでおくシャウトこそが戦略的シャウトです.
筆者はイメージトレーニングの際に「ここでシャウトする」というのも組み込んで行っています.もちろんイメトレの時は実際は叫びませんが...
今日も世界のどこかで誰かが叫んでいる
耳を澄ませてみてください.何かが聞こえませんか?
きっと今日も世界のどこかで誰かが叫んでいるはずです.
そして次はあなたの番です.
皆さんも戦略的に叫んで強くなっていきましょう!!






コメント