夏の南八ヶ岳はピークハントや縦走を中心に人気の山域ですが,冬にも西面にある赤岳鉱泉や行者小屋をベースに多くの人が集まります.赤岳,硫黄岳のピークハントや横岳も含めた縦走など登山としても人気ですが,冬に特に人気を集めるのがアルパインクライミングやアイスクライミングなどのバリエーションルートです.
今回は,冬の八ヶ岳のバリエーションルートの中でもクライミングの要素が少なく,初心者でも十分楽しめるルートである阿弥陀岳南稜を紹介していきます.
八ヶ岳でのアルパインクライミング
冬の八ヶ岳は冬期登攀のゲレンデともう呼べるようなエリアで,入門的なものから難易度の高いものまで20本にもおよぶバリエーションルートが存在しています.日本アルプスと比べたときにより近いアプローチで,赤岳鉱泉などの小屋をベースとして本格的な冬期登攀を楽しむことができるためシーズンになると多くのクライマーで賑わいます.そんな数あるルートの中で最も入門的なルートと言えるのが阿弥陀南稜です.
阿弥陀岳南稜
阿弥陀岳南稜はその名の通り阿弥陀岳の南に伸びる尾根で立場山から継続して取り付きます。クライミングの要素は少なく一般登山の延長として捉えることもできます。ですが核心部のルンゼはしっかりとアイゼンの前爪を効かせて登る必要があり、通常はロープも使用するためバリエーションルートの入門として楽しめます!
ルート紹介
ここからは阿弥陀岳南稜のルートを紹介していきます.
アプローチ~立場山~青ナギ
阿弥陀南稜には広河原に登る際にも使う船山十字路の駐車場を利用します.船山十字路から入山する場合には阿弥陀岳南稜の北側から尾根にあがる形になります.そのほかにも南側の旭小屋経由で入山する方法もありますが,船山十字路からの入山の方が一般的です.
ゲートを越えて30分ほど林道を歩くと標識のある南稜と広河原沢の分岐になります.ここで標識に従って右手に進むと沢を越えてすぐに南稜の取付きにつきます.側面から踏み跡に沿って進んでいくと15分ほどで稜上に出ます.ここからは緩やかな稜線上を登っていきます.
立場山までは所々段差もありますが基本的には難しいところはなく歩いて進めます.ラッセルがなければ1時間半ほどで立場山に到着します.立場山からは若干のアップダウンを繰り返しながら樹林帯を進んでいきます.
青ナギに来ると視界が開け天気が良ければ進行方向に阿弥陀岳南稜が見えるでしょう.筆者たちが行ったときは残念ながら視界不良でした.
無名峰~P2
青ナギから先はこれまでと打って変わって傾斜が強くなります.息を切らせながら急登を登ると樹林帯を抜け最初のピークである無名峰に到着します.
ここから先は無名峰,P1,P2,P3,P4とピークが連続して出てきます.無名峰~P2までは難しいところは少ないですが転滑落すると大事故につながるので早めにアイゼンを装着するようにしましょう.
無名峰,P1,P2は小ぶりな岩峰で西側を巻いて進んでいきます.P2を越えると目の前に巨大な岩壁が姿を現しいよいよ核心部のP3です.
【核心部】P3ルンゼ
P3を尾根通しで超えようとするとしっかりとした岩壁登攀になるので,一般的には弱点であるP3ルンゼを登ります.足元がすっぱり切れたトラバースを経て,西側の小尾根を越えるとP3ルンゼの取付きです.コンディションが良ければノーロープで通過できますが,氷結しているような場合にはロープを使用するほうがよいでしょう.リングボルトにワイヤーが通してあるので適当なところでセルフビレイをとり登攀の準備をします.
P3ルンゼは2Pの登攀になります.傾斜の強い出だしが核心ですがその後も案外悪く気を使います.岩とベルグラと雪のミックスをアイゼンの前爪をしっかりと効かせつつ登っていきます.ランナウト気味にリングボルトでプロテクションをとりつつ40mほどロープを伸ばすとピッチを切ることができます.
2P目は徐々にルンゼが開けてきて灌木も姿を現すので少し余裕が出てきます.稜上の木で支点をとりフォローの到着を待ちます.
阿弥陀岳山頂まで
P3に上がるとなだらかな稜線歩きが少しあります.すぐにP4が眼前に迫ってきます.
P4もこれまでと同様に西側から巻きます.足元がきれたトラバースを通過するとあとはやさしい岩登りで広い阿弥陀岳の山頂に至ります.
広い山頂で一息ついたら,御小屋尾根から駐車場あるいは中岳沢から行者小屋に下山します.そのまま八ヶ岳を縦走するのも面白いかもしれません.
まとめ
冬期八ヶ岳の入門ルートである阿弥陀岳南稜を紹介してきました.P3ルンゼが核心ですが,基本的なロープワーク,アイゼンワークがあれば通過できます.初心者でも行きやすいルートなのではじめての冬期バリエーションルートにいかがでしょうか.
コメント