横岳西面 石尊稜|八ヶ岳のバリエーションルートで冬期クライミング

アルパインクライミング
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 夏の南八ヶ岳はピークハントや縦走を中心に人気の山域ですが,冬にもの西面にある赤岳鉱泉や行者小屋をベースに多くの人が集まります.赤岳,硫黄岳のピークハントや横岳も含めた縦走など登山としても人気ですが,冬に特に人気を集めるのがアルパインクライミングやアイスクライミングなどのバリエーションルートです.

 今回紹介する石尊稜は初級者向けのルートで赤岳主稜などの次のステップアップとしておすすめのルートです!

石尊稜
  • 2つの岩壁と中間部の雪稜がルートのハイライト
  • 中級バリエーションルートへのステップアップに最適
  • 下部の岩壁は安定した支点に守られながら純粋なクライミングが楽しめる

八ヶ岳のバリエーションルート

 冬の八ヶ岳は冬期登攀のゲレンデともう呼べるようなエリアで,入門的なものから難易度の高いものまで20本にもおよぶバリエーションルートが存在しています.日本アルプスと比べたときにより近いアプローチで,赤岳鉱泉などの小屋をベースとして本格的な冬期登攀を楽しむことができるためシーズンになると多くのクライマーで賑わいます.

 人気のルートとしては,入門的なものとして阿弥陀北稜や赤岳主稜,初中級者向けとして石尊稜や中山尾根,上級者向けとして阿弥陀北西稜,大同心雲稜などがあり時として取付きで渋滞することもあります.

石尊稜

 石尊稜は横岳の石尊峰から西に落ちる尾根で,上部下部2つの岩壁と中間部の雪稜から構成されるルートです.八ヶ岳のバリエーションルートの中では,初級~中級程度で阿弥陀北稜や赤岳主稜の次のステップとして最適ですが,コンディション次第ではアプローチの深いラッセルや2つの岩壁登攀も厳しいものとなります.

石尊稜

 クライミングの核心部となる下部の岩壁は60mほどの登攀ですが,ペツルのボルトが打ってあり安定した支点に守られながらクライミングに集中することができます.しかしながら石尊稜と言えば上部下部の岩壁もさることながら,中間部のスノーリッジが非常に美しく代名詞ともなっています.

ルート紹介

 ここからは石尊稜のルート内容を紹介していきます.

アプローチ

 石尊稜には赤岳鉱泉あるいは行者小屋をベースにして登ります.下降は地蔵尾根が近いため泊りで行く場合には行者小屋をベースにするのがおすすめです.

行者小屋

 行者小屋から赤岳鉱泉に向かって進みます.中山乗越から下るところで斜面が緩やかになり西側に道が曲がるところで右手に緑ロープの張られた小沢が現れますがここが迷いポイントです.この小沢に入らずさらに進むと柳川右俣とぶつかるためここから沢筋に入ります.柳川右俣を遡行していくと小同心ルンゼとの分岐が現れます.右の沢をしばらく進むと2つめの分岐が現れ,この分岐の左が三叉峰ルンゼ,右が日ノ岳ルンゼです.この2つの沢に挟まれた尾根が石尊稜で,どちらのルンゼからも取り付くことができます.

 三叉峰ルンゼから行く場合には4mほどの小滝をフリーで超え,12mの大滝(F2)の手前から尾根にあがります.尾根にあがると正面に80度ほどの下部岩壁が姿を現しますが,その手前の岩稜帯も悪いのでコンディション次第ではロープの使用も検討です.

下部岩壁手前の岩稜

下部岩壁

 下部岩壁はⅣ級程度の岩場で60mほどを通常2ピッチで登ります.岩壁の中央基部にハンガーボルトが2つありここが取付きです.混んでいる場合にはその手前にある灌木でもビレイすることが可能です.

下部岩壁取付き

 石尊稜全体を通してクライミングとしての核心部は下部岩壁の1P目になります。いくつかのラインを取ることができますが、正面の70-80°ほどの傾斜のフェイスを豊富なホールドを使って登るのが一般的です。プロテクションはハンガーボルトでとれるため思いきってムーブを出すことができます。ホールドは基本的にはガバで難しい所はありませんが、そこはやはり冬壁、雪がつくと一気に難易度が変わってきます。

石尊稜下部岩壁

 25mほど登ると小テラスになりハンガーボルトが2本打ってあるのでピッチを切ることができます。50m以上のロープであれば上部まで繋げて灌木でビレイすることも可能です。

下部岩壁1P目終了点から見下ろす

 ビレイ点からスラブを10mほど登ると乗っ越しがありここが2P目の核心です。下の岩にカムでプロテクションをとったら草付きにアックスを決めて思いきって越えていきましょう。

 乗っ越したあとは易しい雪の斜面を稜上までロープいっぱい登り灌木でビレイします。

下部岩壁2P目

中間部の雪稜・雪壁

 下部岩壁をこえて稜線にあがると上部岩壁まで稜線を歩きます。

下部岩壁を抜けた先の雪稜

 最初は易しい雪稜ですが、途中にいくつか岩峰がありこれらを巻くときに傾斜の強い雪壁を登るのでパーティの実力によってはいつでもロープを出せるようにしておく必要があります。

中間部にも岩雪壁がある
雪稜

 2つ3つほど岩峰を越えると再び雪稜になり上部の視界が開けてきます。ここから上部岩壁までが、石尊稜のハイライトであるスノーリッジです(、が12月の早い時期だとスノーリッジのスケールは小さいかも!!)。

後半部のスノーリッジ

上部岩壁

 上部岩壁は凹角から登りはじめ、岩稜を2Pのクライミングで越えていきます。

正面に上部岩壁

 5mほどホールドの豊富な凹角を登ると稜上に出ます。下部岩壁と異なり残置の支点は少なめですがクライミング自体は易しいです。ピナクルなどとれる所でしっかりとプロテクションを取っておきましょう。

上部岩壁の取付き

 南側から巻きつつ30mほど登り再び稜上にでたところのピナクルでピッチを切ります。

上部岩壁

 2P目はリッジ左にあるルンゼから登り始めます。ある程度登ると傾斜の落ちた雪面になり適当な所でビレイします。

上部岩壁上部はルンゼをつめる

 最後は正面の岩を巻くように右側の易しい雪面を50mほど登ると広い石尊峰に到着します。八ヶ岳のクライミングは西面を主に登るため寒いですが,石尊峰まであがると太陽が当たるため温かい中でようやく一息つけます.

石尊峰から振り返る

 下山は地蔵尾根が早いです.稜線は岩稜帯歩いもありますが基本的には危険個所は少なく1時間ほどで行者小屋まで下りることができます.

まとめ

 石尊稜の紹介をしてきました.赤岳主稜などの入門的なルートの次のステップとして楽しめるルートです.クライミング自体の難易度は高くはありませんが天候次第ではアプローチのラッセル,登攀,稜線の風など条件は厳しくなります.ですが内容,景観ともに充実するおすすめの1本です.ぜひ挑戦してみてください.

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