八ヶ岳は一年を通して多くの登山者が訪れる人気の山域ですが,雪のない時期はクライマーにとっては少し物足りないかもしれません.しかし,11月の後半になり気温が下がり雪が降り出すと一転しクライマーにとってはとても魅力的な山域となります.
短いアプローチで山小屋をベースとしてアイスクライミングや雪稜や岩壁などの登攀を手軽に楽しむことができます.
今回はそんな八ヶ岳の西側にありシーズンの早い時期から入門的なアイスクライミングが楽しめる広河原沢左俣ルートを紹介していきます.
八ヶ岳でのアイスクライミング
八ヶ岳には見ない八ヶ岳を中心にたくさんのバリエーションルートがあります.雪稜や岩壁登攀,そしてアイスクライミングなど多様なウインターアクティビティーが楽しめますが,アイスクライミングのエリアとしては大きく3つに分けられます.
赤岳や阿弥陀岳,横岳西面などを中心とした八ヶ岳西面と言われるエリアは冬期でも営業している赤岳鉱泉をベースとして冬のシーズンにも多くのクライマーが集まります.
赤岳から権現岳の東側に位置する地獄谷にも初心者から上級者まで楽しめるルートがそろっていますが西面と比較すると入山者が少なくより冒険的なクライミングを楽しむことができます.
そして今回紹介する広河原沢左俣もある阿弥陀岳から西に延びる御小屋尾根の南側に位置する広河原沢エリアです.
広河原沢左俣
広河原沢はアイスクライミングを中心としたエリアで,右俣,左俣,1~3ルンゼなどのルートがあります.クリスマス前後を中心に登られています.
今回紹介する左俣は連続するナメ滝と後半にな2つの大滝を持ち,そのまま沢をつめると阿弥陀岳の西にある摩利支天にたどり着くルートです.2つの大滝はそれなりに傾斜があり難しいですが高巻きすることも可能で初心者でも取付きやすいのが特徴です.
アプローチ
広河原沢には八ヶ岳西面の入口となる八ヶ岳山荘(美濃戸口)方面に向かい御小屋尾根の手前の別荘地で横道に入ります.船山十字路のゲート前に車をとめ林道終点まで歩きます.幕営適地の平坦な広河原沢二股分岐までは2時間ほど歩きます.
シーズン
八ヶ岳で一番早く氷結するのは裏同心ルンゼなどの西面のルンゼですが,広河原沢はその次くらいに氷結します.12月中旬には氷結し始めクリスマス前後くらいにはクライマーで賑わいます.ですがクリスマス寒波などで南岸低気圧が来ると核心部以外のナメ滝は雪に埋もれてしまいます.
ルート紹介
広河原沢の左俣に入り河原を歩くとゴルジュ帯に入り3mほどのF1があります.F1はクリスマス前後だとお釜が凍っていないこともあるので落ちないように注意しましょう.傾斜はないため足慣らしにちょうどよいですが,写真のタイミングではもう雪に埋もれています.
見晴らしルンゼとの分岐あたりからはナメ滝が続きます.5mほどの氷瀑を右側にあがるとその後はゴルジュ帯にが続きます.短いですが傾斜はありパーティの実力によってはここからロープを使うことになるでしょう.
ゴルジュ帯をしばらく進むと傾斜の緩い10mほどの滝を3つほど越えることになります.筆者が行ったタイミングではこの滝も大部分は雪が被っていました.
次に大きなチョックストーン滝が現れこれをチョックストーンの脇から抜けていきます.チョックストーン滝を越えると沢は広がり後ろには山麓の展望が開けてきます.
しばらく広い沢筋を進みますが時期によってはラッセルになります.
沢筋にあるナメ滝を越えると15mほどの大滝が姿を現します.傾斜は80度くらいでⅣ級程度でしょうか.実力のあるパーティならここで初めてロープを出すことになるでしょう.クリスマス前後なら氷は十分に硬く気持ちよく登れます.
15mの大滝を越えてからさらにナメ滝を進むと今度は10mほどの大滝に至ります.15mの大滝よりも傾斜はあり,氷も若干脆いため手こずるかもしれません.氷の状況をしっかりと見極め場合によっては右側から巻きましょう.
10m滝を越えてからも沢筋を進みますが,左手に御小屋尾根が近いので適当なところから稜線に上がりましょう.
下山は駐車スペースまで下りる場合は御小屋尾根の一般道を下ります.広河原沢の二股にベースとする場合には中央稜を下るのがロスが少ないです.灌木も豊富なので懸垂下降を交えながらの往路下降も可能です.
まとめ
広河原沢左俣は12月になると登れるルートで,連続する氷瀑としっかりとしたアイスクライミングを楽しむことができる2つの大滝が魅力です.阿弥陀岳まで抜ければ満足度もさらに上がることでしょう.シーズン早めの1本としていかがでしょうか.
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