厳冬期白峰三山縦走|年末年始に歩く天空の稜線,北岳~農鳥岳

冬山
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 白峰三山は無雪期には難所の少ない登りやすい山ですが冬になるとその環境は一変します.日本で屈指の標高を持つ稜線であり真冬になると強風や気温など厳しい自然環境が登山者を苦しめます.一方で雪をまとった白峰三山の稜線は非常に美しく訪れたものの心を奪います.

 今回は厳冬期の中でも比較的雪が少なく登りやすい年末年始の時期の白峰三山について紹介していきます.

厳冬期白峰三山縦走
  • 日本第二,第三の山を含む3000m峰五座の縦走路
  • 八本場周辺,農鳥岳の登りなど危険個所はあるが部分的
  • 北アルプスを比較すると天候は安定しているが3000mの稜線であり冬の厳しさを持つ

白峰三山

 白峰三山は日本で二番目に高い北岳に加えて,奥穂高岳と並んで日本で三番目に高い間ノ岳,そして同じく3000mを超える農鳥岳の三山から構成されます.さらに西農鳥岳,中白峰なども含め3000m峰をつなぐ縦走路としては他に槍穂高連峰,立山三山,荒川三山などがあります.そんな中,日本第二,第三の高山をつなぐ白峰三山はまさに天空の縦走路というにふさわしいルートです.

冬の白峰三山

 無雪期の白峰三山は危険個所や難所も少なく比較的登りやすい山ですが,厳冬期にはそれは一変します.3000mの稜線は強い風や厳しい寒さに襲われ,標高が下がり風をよけられるようになると今度は深いラッセルに苦しめられます.また八本場周辺,農鳥岳の登りなど気を抜けない箇所もあります.その分達成感は大きく,冬ならではの景色も美しく充実する参考になることは間違いありません.

 年末年始であれば2泊3日の行程で縦走することが可能です.雪の状態次第ではもう1日余分にかかることもあるので予備日を設定おくとよいでしょう.3月以降の雪が締まった時期であれば健脚なら1泊2日の行程も可能かもしれません.

奈良田~歩き沢橋~城峰(2372m)

 冬に白峰三山を縦走する場合も無雪期と同様に夜叉神峠あるいは奈良田から入山します.違うのはゲートが閉じてしまうため無雪期にはバスで快適に通った道を歩く必要があります.今回は奈良田から入山するルートを紹介します.

奈良田ゲート
長い林道歩き

 冬の北岳は雪崩のリスクがあるため広河原からではなく池山吊尾根から登ります.奈良田から約12㎞の道のりを重い荷物を背負って3-4時間歩きます.

あるき沢橋

 あるき沢橋からは登山道になりますが苦しい急登から始まります.600mほどの苦しい急登を登るとようやく吊尾根の稜線に出ます.稜線をしばらく歩くとぽっかりと雪原がひらけ対岸に池山御池小屋が姿を現します.

池山
池山御池小屋

 池山御池小屋は冬期は避難小屋を開放しており避難小屋あるいは御池小屋周辺で幕営することも可能です.この先2372mの城峰付近までは適宜幕営可能個所があるので余力があればもう少しだけ行程を進めましょう.

城峰

城峰~北岳

 城峰からは再び樹林帯の中の急登を登ります.全行程を通して登りではこのあたりが一番雪が深くラッセルが続きます.年末年始であれば雪もそれほど多くなく人も多いので意外と快適に進めるかもしれません.2時間ほど登ると樹林帯を抜けなだらかな雪稜の先にボーコン沢の頭があります.

ボーコン沢の頭までの登り
ボーコン沢の頭からみた北岳

 ボーコン沢の頭では視界が開け目指すべき北岳がはっきりと見えます.ここから見ると北岳バットレスがよく見えます.

 なだらかな稜線を1時間ほど進むとルート全体を通しての核心部がはじまる八本場の頭に到着します.八本場のコルへの下降は5mほどですが傾斜が強く痩せているため滑落には要注意です.鎖やフィックスロープが出ていれば安心ですが,ここからはしばらくやせ尾根が続くのでコンディションによってはロープの使用も考えましょう.

最大の核心.八本場のコル
八本場のコルを振り返る

 八本場のコルまでくるとようやく一息付けます.岩稜を主稜線まで登り返し,分岐についたら北岳山頂まで往復します.山頂までは夏道にならいますが,西面であり硬くクラストした斜面も通過するのでアイゼンをしっかりと効かせて歩きましょう.

北岳への登り

 山頂は風が強くこの時期ならあまり雪はついていません.360度の展望を堪能してから来た道を引き返します.

北岳山頂

北岳~間ノ岳~農鳥小屋

 北岳から間ノ岳までは危険個所は特にありませんが相変わらず強い風に吹かれます.北岳山荘周辺は風をよけることもでき幕営には最適です.時間に余裕があればこの先も幕営可能個所はありますので先に進みましょう.中白峰をこえ間ノ岳まで登り返します.

北岳山荘とその先に続く稜線
日本第3の山.間ノ岳

 間ノ岳は標高3190mあり奥穂高岳と並んで日本第3の標高を持ちます.山頂付近は広い稜線で天候不良の時は道迷いに注意しましょう.間ノ岳からの下りも特に危険個所はありません.

間ノ岳山頂付近は迷いやすい
間ノ岳山頂
農鳥小屋までの下り

 間ノ岳山頂から1時間ほど下った鞍部に農鳥小屋があります.2泊3日の行程の場合には2日目は農鳥小屋に幕営します.避難小屋はありませんが小屋の陰にスペースがあるので風をよけて一夜を過ごすことができます.

農鳥小屋

農鳥小屋~農鳥岳~大門沢小屋~奈良田

 農鳥小屋から南に延びる稜線を登り返すと西農鳥岳に至りますがこの登りが第2の核心です.最初は尾根通りで登ることができ年末年始であればほとんど夏道通りに進むことができます.

農鳥岳への登り

 途中から岩稜帯になるため西側に巻き雪壁を登ります.西面の雪壁でありクラストした斜面なので滑落には十分に注意しましょう.再び稜線に上がるとすぐに西農鳥岳に到着します.西農鳥岳から振り返ると北岳,間ノ岳と歩いてきた稜線がよく見えます.

西農取岳から稜線を振り返る

 西農鳥岳から農鳥岳までは西側の夏道に沿って若干のアップダウンで登ることができます.農鳥岳はなだらかな山容の山です.農鳥岳を少し超えた先にも幕営可能個所があります.

農鳥岳
農鳥岳山頂

 農鳥岳から先も南アルプスの稜線は続きますが今回は大門沢下降点から下降します.

農鳥岳からの稜線

 大門沢の上部は正月前後でも雪は多いので雪崩には十分に注しながら下降しましょう.

大門沢下降点
大門沢

 ラッセルをしながら大門沢を2時間ほど下ると大門沢小屋につきます.大門沢小屋は冬期も避難小屋として開放されていますが,奈良田まで3時間ほどなので時間に余裕があれば下ってしまいましょう.

大門沢小屋
冬期は避難小屋として開放されている

まとめ

 年末年始に行く白峰三山の縦走を紹介してきました.3000m峰五座をつなぐ日本屈指の縦走路で登山をする人であれば一度は歩きたいものです.真冬の3000m峰であり厳しさはありますがルートの危険個所は部分的でありしっかりと経験を積めば十分挑戦可能です.無雪期とは違って人も少なく,美しい南アルプスの稜線を貸し切りできるのもまた素晴らしいです.ぜひ一度登ってみてください!

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