錫杖岳前衛フェイス P4チムニー(厳冬期)|連続するチムニーで冬壁の醍醐味を味わおう!

アルパインクライミング
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 錫杖岳は近いアプローチで本格的なアルパインクライミングが楽しめる人気のエリアです.無雪期には左方カンテや3ルンゼ,1ルンゼなど初心者でも楽しめる質の高いルートがそろっていますが,冬になるとそれらのルートも厳しいものに姿を変えます.それでもシーズンになると多くのクライマーが集まるのはそれだけ魅力のある山域だからでしょう.

 今回はそんな冬の錫杖岳の中から,冬期登攀の醍醐味であるチムニーやルンゼなどの内面登攀を満喫できるP4チムニールートを紹介していきます.

P4チムニー
  • 連続するチムニーで冬壁の醍醐味である内面登攀を楽しめる
  • 4Pいずれとも内容が濃く充実する
  • 上部に雪田がなく悪天候でも気にせずに登れる

錫杖岳P4

 錫杖岳は

 錫杖岳の前衛フェイスには3つの顕著なルンゼがあり、それらによって4つの岩壁に分けられます。中でもP4は3ルンゼを挟んで明確に分けられます。前衛フェイスの中でもややこぶりな岩峰であるP4ですが、多くの凹角やルンゼ、チムニーを有しており特に冬期には冬壁の醍醐味である奮闘的な内面登攀を楽しむことができます。テクニカルなルートも多く、軽い気持ちで取り付くと思わぬ苦戦を強いられます。

P4チムニー

 P4チムニーはP4に数あるチムニーのルートの中でも最も入門的なルートです。全4Pで構成されますがそのほとんどのピッチにチムニーがあり充実すること間違いありません.錫杖岳の冬期クライミングの入門的な立ち位置にある3ルンゼの次のステップとしておすすめのルートです.

P4チムニー

アプローチ

 P4チムニーは3ルンゼから100mほど右に行ったところに取付きがあります.クリヤ岩舎から赤テープやトレースに沿って直上すると概ねP4の基部に到着するのでチョックストーンのあるルンゼが目印です.

P4チムニー取付

装備

 P4チムニーはチムニーと雪壁からなるルートでプロテクションとしてはカムが有効です.チムニーの内部にはベルグラが張っているところもあるのでカムが効かないところにはトライカム,氷が厚い所にはスクリューが必要となります.雪壁部分は傾斜が強くないか,傾斜が強くても灌木で支点が取れるのでスノーバーは必要ありません.下降は基本的に同ルートを懸垂下降となるのでダブルロープ推奨です.

  • 50mダブルロープ
  • アルパインヌンチャク 10本
  • キャメロット #0.3,0.4, 0.5, 0.75×2, 1×2, 2×2, 3,4
  • トライカム #0.5,1,1.5,2
  • アイススクリュー 13㎝ 4本
  • 捨て縄,ハーケン(敗退用)

ルート紹介

 ここからはルート内容を紹介していきます.P4のルートはチムニーが交わったり分岐したり複雑ですが真上を目指して登っていけば大丈夫です.参考までに体感グレードも記載しておきます.

1P目 Ⅳ

 1P目は目立つチョックストーンのあるルンゼを登ります.出だしは遠目にみるとそこまで傾斜は強くなさそうですが,チムニーに入ってしまうと抜け口の傾斜が強く難しいです.しっかりと雪かきをすればチムニー内部にカムでプロテクションをとれますが雪の量も多く見つけにくいです.チムニー横のフェイスはスタンスはありますが雪がのっていると一苦労します.

P4チムニー1P目

 中間部で小テラスがありレストすることができますが天候によってはスノーシャワーを絶え間なく浴びることになります.小テラスからチョックストーン裏のトンネルに入る2-3mが傾斜も強くベルグラ頼りのクライミングになるので緊張します.トンネルに入ってしまえば氷もしっかりとしアックスやスクリューが決まるので快適に登れます.

1P目 トンネルの中は快適な氷

 最後はサクサクの雪壁を10mほど登り正面のルンゼから一度右のそれた灌木でピッチを切ります.

2P目 Ⅳ

 2P目は1P目の真上にあるルンゼを登ります.1P目のビレイ点をルンゼ右の灌木でとった場合には一度下りて登り返すか,小リッジをトラバースしてルンゼに入ります.一見ルンゼに見えますが雪のつまったチムニーでここが「件のチムニー」となります.

2P目 左のルンゼを登る

 リッジを越してルンゼに入る場合には灌木から3mほど雪面を登ったところからトラバースします.スタンス,ホールドは豊富にありますが雪がついているといやらしくルンゼ端の立木までが緊張します.

2P目出だしはリッジを越える

 ルンゼの上部は傾斜が強いですがアックスよく聞く雪壁で気持ちよく登れます.ただしプロテクションはプアです.正面の岩壁にぶつかり,右側に緩傾斜ルンゼが分かれるところの灌木でピッチを切ります.

2P目終了点から

 正面の岩壁はダイレクトルンゼです.傾斜が強くみるからに難しそうです.P4チムニールートは右手にある緩傾斜ルンゼを登ります.

目の前にはダイレクトルンゼ

3P目 Ⅳ+~Ⅴ

 3P目は緩傾斜ルンゼを少し登るとチムニーがありここを右手のベルグラを頼りに越えていきます.

3P目 出だしは緩傾斜ルンゼ

 チムニーを越えた後は緩傾斜ルンゼをまっすぐに進みたくなりますが,途中に左から入るルンゼがチムニールートの本流です.

3P目 直上ではなく左から入るルンゼを登る

 左側のベルグラか,右側の斜上クラックからルンゼに入ります.左のベルグラはアックスはよく刺さりますがプロテクションがとりにくくランナウトします.右のクラックはカムでプロテクションが取れますがフットホールドは細かくデリケートなクライミングになります.いずれも5mほど登りルンゼ内の灌木でピッチを切ります.

3P目 ルンゼに入るところが核心

4P目 Ⅳ+

 4P目は左側のオフウィズスか右のチョックストーンのチムニーを登ります.筆者は右のチムニーを登りました.チムニー内にはクラックがありカムでプロテクションが取れます.バック&フットで高度を上げつつ,最後は右から垂れるベルグラにアックスを指して乗越します.

4P目 2つあるチムニーのどちらかを登る

 チムニーを抜けるとあとはハイマツの生えた急なルンゼを登り50m目いっぱいロープを出したところの木でピッチを切ります.途中岩場もありますが基本的にはハイマツをつかんでぐいぐい高度を上げていきます.

チムニーを付けたらあとはハイマツの生えた急なルンゼ

 下降はそれぞれの終了点付近に生えている木を使っての往路懸垂下降です.1P目の終了点だけはラインから外れるのでチョックストーン上の木から下降するとスムーズです.

まとめ

 P4チムニールートを紹介してきました.冬期登攀の醍醐味であるチムニーやルンゼなどの内面登攀が楽しめるおすすめの1本です.アプローチも近く,悪天候でも登れるのでぜひ一度登ってみてください!

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