剱岳は「最も危険度の高い山」として知られており,登山をするひとであれば一度は登ってみたい憧れの山です.
そんな剱岳の山頂に向かって真っすぐに突き上げるのが「源次郎尾根」です.
今回はバリエーションルートとしての源次郎尾根について紹介していきます.
剱岳って?
剱岳は北アルプス北部の立山連峰に位置する標高2999mの山です.日本百名山に選定されています.その他にも日本では数少ない氷河があることやライチョウの生息地としても有名です.
一番登山者の多い「別山尾根(べっさんおね)」は一般道の中で最も危険度の高い登山道と言われています.
本峰まではたくさんのはしごや鎖場があり,一番の難所といわれる「カニのタテバイ」「カニのヨコバイ」はほぼ垂直な壁を鎖を頼りに進んでいかなければならなく,多くの滑落事故が起きています.
新田次郎の小説「剱岳 点の記」は今から100年以上前に行われた剱岳登頂の厳しさを書いたもので映画にもなっているので聞いたことのある人は多いでしょう.
そんな剱岳ですが,一般の登山だけではなくアルパインクライミングのエリアとしても人気があります.今回は数あるルートの中でも一番難易度の低い「源次郎尾根」について紹介していきます.
源次郎尾根に登ってみよう
源次郎尾根は剱岳にダイレクトに突き上げる尾根でバリエーションルートのひとつです.
本格的な岩稜帯歩きに加え,ちょっとしたクライミングの要素や高度感のある懸垂下降などアルパインクライミング入門者にはもってこいのルートです.
自分たちで行く場合にはロープワーク等をしっかり習得してから挑戦しましょう.人気のルートであり山岳ガイドによるツアーもたくさん催行されているのでガイドを利用するのも一つの選択肢かもしれません.
アプローチ
源次郎尾根を登る場合,ベースキャンプとなるのは剣沢に隣接している剣沢小屋または剣山荘とするのが一般的です.いずれかの小屋から剣沢を平蔵谷出合まで下降します.剣沢雪渓を下ることになるのでアイゼンまたはチェーンスパイクを装着した方がよいでしょう.また事前に富山県警に雪渓の状態を確認しておきましょう.
真正面に源次郎尾根や八ッ峰をとらえながら剣沢雪渓を30分ほど下ると,左手に巨岩が現れその奥に上部からまっすぐに伸びる平蔵谷が現れます.
源次郎尾根は末端が二股に分かれた尾根で,無雪期は左の尾根の末端,残雪期は尾根の間のルンゼから取付きます.左の尾根の末端は草木が生い茂った道で踏み跡がしっかりついているので踏み跡に沿って進んでいきましょう.
源次郎尾根Ⅰ峰
草木の間を進むと最初の核心が来ます(左下図).高さはそれほどありませんがややハングした岩場になります.上からお助けひもが垂れていますが短くあまり頼りになりません.
その後は踏み跡に沿って,傾斜のある道を木をつかみながら登っていきます.ところどころに傾斜のある岩場があるので不安な場合はロープで確保をしながら進みましょう.
尾根を登ると二股に分かれた末端の尾根のもう一方と合流します.この辺りはもろい足場を登ることになるので落石させないように慎重に登りましょう.
正面にⅠ峰の上部岩壁がみえてきます.この岩壁もアルパインクライミングのエリアになっています.
とりつきから2-3時間で一峰の頂上にでます.Ⅰ峰頂上からは二峰がよく見えます.コルまで下りてⅡ峰を登り返します.
源次郎尾根Ⅱ峰
Ⅱ峰の上りは一見急な岩壁ですが,ハイマツ帯と岩場の境界を登るとそれほど難易度は高くはありません.1時間ほどでⅡ峰の頂上にでます.
Ⅱ峰の頂上は台形上となっており広くなっていますが,一部には高度感のあるリッジとなった部分もあるのでしっかりと三点支持をしながら進みましょう.
Ⅱ峰からは八ッ峰の稜線がとても近くに見えます.源次郎尾根の次は八ッ峰に挑戦してみるのも一つ手の選択肢でしょう.
台形部分を少し降りると,Ⅱ峰の端はほぼ垂直な壁となっており懸垂下降が必要です.懸垂支点はしっかりとしたものがあります.距離としては30mほどの懸垂下降ですが,岩壁の途中にも支点があり,2回に分けて下降することも可能です.
この高度感のある懸垂下降はアルパインクライミングの醍醐味のひとつでしょう.
剱岳本峰
懸垂下降をしてコルに出れば本峰まであと少しです.足場の悪い岩場を登ることになるので落石には十分に注意しましょう.
この辺りは傾斜が緩くなっており,緊急時には平蔵谷にも長次郎谷にも下降することが可能です.
下降は別山尾根からになります.一般道にはなりますが,前劔までは険しい岩場が続くので気を抜かずに進みましょう.
まとめ
剱岳にダイレクトに伸びるバリエーションルートの源次郎尾根主稜を紹介してきました.
源次郎尾根は岩稜帯歩きや,ちょっとしたクライミング,高度感のある懸垂下降などアルパインクライミングの要素が盛りだくさんなのでとても魅力的なルートです.
難易度は決して高くはなく,初心者でもしっかりと準備をすれば挑戦できるルートなのでぜひ挑戦してみてください.
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