錫杖岳前衛フェイス 3ルンゼ(厳冬期)|定番ルートで冬壁入門

アイスクライミング
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 冬のクライミングを楽しめる人気のエリアのひとつが八ヶ岳です.アプローチの良さや,初級者から上級者まで楽しめる幅広いグレード感,天候の安定感などからシーズンになると多くのクライマーが集まります.

 そんな八ヶ岳でバリエーションルートを経験した次のステップとしておすすめなのが冬の錫杖岳です.無雪期には高難易度のアルパインクライミングが楽しめる錫杖岳ですが,積雪期にも充実したクライミングを楽しむことができます.

 今回はそんな錫杖岳の中でも入門的なミックスクライミングが楽しめる3ルンゼの紹介をしていきます.

錫杖岳3ルンゼ
  • 冬の錫杖岳の入門ルート
  • 本格的なミックスクライミング
  • 新穂高から日帰りでの登攀も可能

錫杖岳

 錫杖岳は日本百名山のひとつである笠ヶ岳の南に延びる稜線に位置する標高2168mの山です.一般的な登山道はなく,登山者にとってはあまり馴染みのない山かもしれません.

 しかし,錫杖岳には前衛フェイスをはじめとした巨大な岩壁がありクライマーにとっては本格的なロッククライミングが楽しめる山になります.また新穂高温泉から2時間ほどで岩場にたどり着くというアクセスの良さも魅力のひとつかもしれません.

錫杖岳前衛フェース

 無雪期には初心者でも楽しめるアルパインクライミングの入門的なルートから一流のフリークライマーが苦労するような高難度のものまで多彩なルートがある錫杖岳ですが,冬の錫杖もまた魅力的です.八ヶ岳などで冬季クライミングを経験した人が次のステップとして挑戦する少しだけ敷居の高いエリアになります.

前衛フェイス 3ルンゼ

 前衛フェイスにある3ルンゼルートは全体的に難易度が高い錫杖岳の中でも入門的な立ち位置にあるルートです.F1からF6まで滝がありこれらを岩,雪,氷が混じったミックスクライミングで超えていきます.5-6ピッチほどのクライミングで3ルンゼのコルに出ることができ,そこからグラスホッパーというアイスクライミングのルートに継続することも可能です.

 錫杖岳では入門的な立ち位置にあるルートですが冬の錫杖自体がハードルが高めなので経験のない人はガイド山行なので経験を積んでから挑戦するようにしてください.

アプローチ

 3ルンゼがある錫杖岳前衛フェイスまでは,ラッセルがなければ中尾高原駐車場から3時間弱で到着します.ラッセル次第では1日仕事になることもあります.

錫杖岳

 クリヤ沢の登山道を錫杖沢を過ぎた先にあるクリヤ岩舎を目指します.無雪期には錫杖沢出合から前衛フェイスに向かって登っていきますが雪崩のリスクもありクリヤ岩舎あたりから樹林帯をつめるのが一般的です.

装備

 3ルンゼルートに行くときに持っていた装備を登攀具を中心に紹介します.

  • 50mダブルロープ
  • アルパインヌンチャク 120cm 6本,60cm 7本
  • キャメロット #0.4, 0.5, 0.75, 1, 2, 3
  • アイススクリュー 21㎝ 1本,16㎝ 2本,13㎝ 5本
  • 捨て縄,ハーケン(敗退用)
  • アブミ 2つ(共同装備)
  • 個人登攀具(ハーネス,ヘルメット,クライミングシューズ,確保器,フィフィ,,)
  • アイゼン,ピッケル

 ルートの屈曲はそれほどありませんが,下降は往路を懸垂下降するのが一般的なのでダブルロープ推奨です.プロテクションは残置のハーケン中心に取れますがカムも重宝します.コンディション次第ではF3,F5,F6あたりはアイスクライミングになるのでスクリューが必要です.またF6は氷の発達が不十分の場合には難易度があがりアブミが必要になる場合もあります.ただリングボルト2つ分なのでパーティで1組あれば大丈夫だと思います.

 ペツルのレーザースピードライトは軽量スクリューで少しでも軽量化したいアルパインクライミングにおすすめです!

ルート紹介

 前置きが長くなりましたがここからルートの紹介をしていきます.3ルンゼは著明なルンゼの中を登っていくルートでF1からF6まで6つの滝を登りますが,通常F1は埋もれていて雪壁登りになります.基本的にはルートの初めに数mのチョックストーンを越え,その後雪の斜面を登るという行程を繰り返します.

3ルンゼ

 北アルプスを中心に冬期クライミングのルートがたくさん載っているトポです.冬期クライミングをする人はまずはこの一冊を!!

F2 Ⅲ級

 雪に埋もれたF1をノーザイルで登り下の写真にある露岩に古いハーケンがあるのでここでビレイをしてF2の登攀の準備を始めます.

F2

 F2は露岩の右側のルンゼを登ります.易しい岩と氷を30mほど登ります.F3の手前に残置のハーケンがあるのでここでピッチを切ります.

F2

F3 Ⅳ級(右の氷),Ⅴ-級(左の凹角)

F3

 F3は氷が発達していればルンゼ部分を直登できます(Ⅳ級)が,氷の発達が悪いとビレイ点から左の凹角の岩場(Ⅴ-)を登る必要があります.この凹角を左上気味に登りつつ越えていきます.スタンスは細かくシビアですが残置支点は多いのでしっかりランニングをとりながら登っていけます.

F3

 ルンゼから外をみると穂高の稜線が垣間見えます.

ルンゼから外をみる

F4 Ⅲ+級

 緊張するF3とは打って変わってF4は楽しいクライミングです.チョックストーンの下をくぐり氷化したトンネルを抜けていきます.

F4
F4

 トンネルの中の氷は薄いですが,アイゼンはよく効きカムで支点も取れるため安心して登っていけます.

F4

F5 Ⅳ級

 F5もチョックストーン滝です.無雪期は右の壁から登りますが,冬は左の壁に発達する氷を登っていきます.スクリューでプロテクションは取れますがところどころ氷は薄いため緊張します.

F5
F5

 チョックストーンを越えたらあとは氷雪壁を登っていきます.

F6 Ⅴ級,またはA1

 フリーで抜ける場合はF6がルート中の核心です.弱点は右壁とチョックストーンの間ですがうす被りしています.またF5に氷が張っていてもここは氷の発達が悪いときもありスカスカの氷にスクリューを決めながら登っていきます.リップの氷雪にアックスがかかれば一安心です.氷雪の斜面を登り灌木で3ルンゼは終了です.

F6

 フリーにこだわらない場合には左壁にリングボルトが2-3本あるのでこちらを使ってA1で抜けます.4mほどで抜けられるのでアブミの架け替えは必要なくパーティで2本あれば十分です.

F6

 前衛フェイスの北東壁にあるグラスホッパーは純粋なアイスクライミングが楽しめるルートで3ルンゼからの継続登攀が可能です.3ルンゼ終了点から20mほど雪壁を左上すると取付きに到着します.

 ちなみに筆者が行ったタイミングでは氷の状態はいまいちでした.

グラスホッパー

まとめ

 冬期クライミングが楽しめる錫杖岳の入門ルートである3ルンゼを紹介してきました.冬の錫杖はやや敷居は高めですが3ルンゼのクライミング自体は八ヶ岳などでバリエーションルートを経験していれば十分挑戦可能です.北アルプスの中で八ヶ岳とは違ったウインタークライミングを楽しめることでしょう!!

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