穂高連峰と言えば山に登る人ならだれでも知っている北アルプスを代表する峰々です.前穂高岳,奥穂高岳,西穂高岳,北穂高岳など3000m級の山々から日本最高峰の稜線を構成しています.
明神岳はそんな穂高連峰を構成する峰々のうちの1つで,主峰ⅤからⅤ峰の5つのピークがあります.大人気の穂高連峰にある明神岳ですが実は一般登山道はなくピークを踏むにはバリエーションルートを登る必要があるという珍しい山です.そのため登山者は多くはなく昨今の登山ブームの中でも静かな山歩きを楽しむことができます.
今回は,そんな穂高連峰の名峰明神岳について紹介していきます.
明神岳
明神岳は前穂高岳,奥穂高岳,西穂高岳,北穂高岳と並んで穂高連峰を構成する山でかつては穂高岳と呼ばれていたこともあります.2931mの主峰からⅤ峰まで5つのピークを持っており,上高地から明神,徳沢に向かって歩いていると梓川をはさんで対岸にその雄大な姿を現します.
穂高連峰は初心者・入門者には憧れの山として,上級者には実力試しの山として人気の山域ですが,この明神岳には一般ルートがなくバリエーションルートしかないため他の穂高の山と比べると登山者は少なめです.そのため昨今の登山ブームの中でも静かな稜線歩きが楽しめます.とは言うものの決して高度な技術が必要なわけではなく一般的なロープワークができれば十分挑戦できるルートです.
残雪期の明神岳
明神岳の登山ですが無雪期はもちろんのことまだ雪の残るGW周辺の残雪期の登山も魅力的です.今回紹介するのはGWの連休周辺の残雪期に明神岳の主峰からⅤ峰まで縦走するルートです.
年にもよりますが残雪期でも日当たりのいい明神岳の稜線の雪はあまり残っていません.一方で沢筋にはしっかりと雪渓が残っているため雪崩に十分注意しながら奥明神沢,前明神沢などの沢筋も登下降に使用することができます.五峰からの登下降には無雪期,残雪期ともに南西尾根を利用するのが一般的です.
残雪期の前穂高岳の一般的な登頂ルートである奥明神沢は途中で二股に分かれ,右俣の急な雪渓を詰めると明神岳主峰と前穂高岳のコルに到着します.もちろん,ダイレクトルンゼを登って前穂高岳まで登ってから明神岳を縦走するコースもあります.無雪期であれば重太郎新道から前穂高岳経由で稜線にでるのが一般的です.
明神岳縦走のベースとなる岳沢周辺にはその他にも様々なレベルのバリエーションルートが沢山あります.下記のリンクで紹介しているコブ尾根などは岳沢から登れる代表的なルートです!!
明神岳縦走
2931mある主峰は傾斜はそこまで強くありませんが浮石が多く慎重に上り下りする必要があります.主峰から下降してくると小さいながらもしっかりとした岩壁のⅡ峰が現れます.
このⅡ峰では主峰から五峰に向かって登る場合にはⅢ級程度のちょっとしたクライミングが,五峰から主峰に向かって縦走する場合には懸垂下降が必要になります.難易度は入門的なものですが基本的なロープワークが必要です.
Ⅱ峰から先はやさしい岩稜帯歩きです.バリエーションルートなのでペンキやテープなどのマーキングはありませんが,しっかりとした踏みならされておりルートを見失う心配はそれほどありません.ところどころあるガレ場を落石させないように注意しましょう.長めのいい貸し切りの稜線を2-3時間ほど歩くとピッケルのささったⅤ峰に到着します.
明神岳Ⅱ峰の岩壁
明神岳の主峰や前穂高岳を目指してⅤ峰から縦走するコースも充実しますが,クライミング的な面白さでいえば主峰からの縦走で巡り合うⅡ峰の岩壁の登攀は魅力的です.小さいながらもしっかりとした岩壁で,主峰とⅡ峰のコルに立ったときの威圧感はすさまじいです.
岩壁の左側の凹角の弱点をうまくついたライン取りでホールド・スタンスのしっかりあるⅢ級程度のクライミングですが,残雪期でアイゼンをつけているとなかなかてこずるかもしれません.2ピッチほどのクライミングでⅡ峰のピークにでます.
ルートの他の部分は歩きがメインですが,3000m近い標高でのクライミングは爽快です.
南西尾根
Ⅴ峰からの登下降は無雪期・残雪期ともに南西尾根が一般的です.バリエーションルートですが整備もしっかりされています.踏み跡も明瞭で要所要所の岩場ではフィックスロープが張られています.とは言うもののバリエーションルートには違いなく,確実なルートファインディング,三点支持が行える必要があります.
樹林帯を抜けると気持ちのいい稜線歩きで背後には上高地の絶景が広がります.途中幕営適地もあるので非常時にはビバーク可能です.
前明神沢
主峰からⅤ峰まで縦走後の下降は南西尾根からが一般的ですが,雪の残る時期であれば前明神沢から下降すれば時間の短縮につながります.
Ⅴ峰からいったんⅣ峰とのコルまで戻り,雪渓のつながっているところから降りやすい所を降りていきます.途中雪渓が急になりその下に小滝がでてくるのでハイマツや灌木を使って懸垂下降をするのが手早いでしょう.
懸垂で降りた後はひたすら沢筋を下降していきます.グリセード(尻セード?)を交えつつ小一時間下りていくと一般道に合流します.
まとめ
明神岳主稜の縦走について紹介してきました.人気エリアの穂高連峰に連ねながらも一般登山道のない不遇の山です.ですが,その魅力自体は他の穂高の山にも負けず劣らず,なおかつ静かな稜線歩きが満喫できる名峰です.一度挑戦してみてはいかがでしょうか.
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