登山初心者でも富士山に登れるのかを考える

富士山 無雪期登山
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 日本一の山とえば「富士山」というのは日本人ならばほとんどの人が答えられると思います.

 富士山は登山をする人なら憧れの山であることはもちろんのこと,登山をしない人でも一生に一度は登ってみたい山でしょう.

 そんな富士山ですが,実際はどの程度の難易度なのか初心者でも登れるのかなどについて考えていきます.

いわずと知れた日本一の山

日本一の山である富士山

 富士山は言わずと知れた日本一の山であり,おそらく日本人で富士山を知らない人は少ないでしょう.

 標高は3776mと第二位の南アルプス北岳と500mも差をつけての圧勝です.また円錐形の美しい山容は世界に目を向けても他にはなく海外からの登山者もたくさんいます.多い年では開山シーズンである2か月の間に30万人もの人が富士山に登っています.

 文化的な面に目を向けると,日本を象徴する山であり千円札にも描かれています.世界文化遺産に登録されたのは記憶に新しいでしょう.文化的にも日本一の山と言っても過言ではありません.

富嶽三十六景
富嶽三十六景

 そんな日本一の山である富士山ですが,登山をする人はもちろん登山をしない人でも一度は登ってみたい山になります.

富士山の厳しさ

 日本一の山である富士山ですが,いざ登山となると日本一であるがゆえに厳しい山に様相を変えます.富士山はその標高の高さゆえに以下のような厳しさを持っています.

富士山の厳しさ
  • 空気が薄い
  • 標高差が大きい
  • 気候の変化が激しい

空気が薄い

 一般に高いところほど気圧が低くなりますが,登山の世界では大気圧が半分になる標高5800m以上を超高所と言い,標高3500~5800mを超高所,2500~3500mを高所と言います.

 海抜0mでは1013hPaの大気圧ですが,標高3776mの富士山の山頂では約650hPaまで気圧が下がります.これに伴って空気中の酸素の量も減るため富士山の山頂では平地と比べて酸素の量が約3割も少ないことがわかります.

酸素が薄い

 高所以上の環境では,頭痛やめまい,食欲不振,疲労などの高山病の症状が出現する可能性があります.また酸素も薄くなるため軽い運動や,場合によっては安静にしているときでも息が上がるようになります.

標高差が大きい

 富士山の登山口は4か所ありますが,登山口の標高が一番高い富士宮ルートでも標高差約1400m,一番低い御殿場ルートでは2300mもの標高差があります.距離にすると富士宮ルートで約9㎞,御殿場ルートでは20㎞もあります.

 ちなみに登山者の憧れの山である槍ヶ岳で一番難易度の低い槍沢ルートでは標高差1700m,距離38㎞(内約20mはほぼ水平移動)の行程を2日あるいは3日かけて登頂するのが一般的です.また日本三大急登とされる甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根は標高差2200m,距離17㎞と富士宮ルートとほぼ同程度の行程になります.

 一見気軽に登れるような気がする富士山ですが,標高差や距離でみると日本を代表するような厳しい山と何ら変わらないことがわかります.

気候の変化が激しい

富士山

 富士山は日本一高い山であり,その山頂の気候は下界とは全く異なります.特に標高の高い所では「気温」と「風」の2つの厳しさがあります.

 気温は逓減といって100m高度があがる毎に気温が0.6℃下がるといわれています.つまり富士山の山頂と海抜0mの地点では約22℃も気温が変わることになります.

 つまり夏真っ盛りであっても富士山の山頂では気温が一桁台ということは普通のことなのです.下のグラフは富士山頂の観測所で観測された気温の平均ですが,8月でも平均気温6.4℃と冬のような気温であることがわかります.

富士山山頂の気温
気象庁観測データより作成(1991-2020年)

 また富士山は独立峰であり,風が強いことでも有名です.

 風速1m/sの風が体にあたると体感温度が1℃下がるといわれています.気温の低さも合わせると富士山の山頂では「寒い」と感じる人が大半でしょう.

 また下のデータは平均風速ですが,瞬間最大風速は平均風速の2~3倍にもなるといわれているので8月でも25m/s程度の強風が吹く可能性は十分にあります.ちなみに風速20m/sをこえると電車や船は運休することもあり,ひとはまっすぐ歩くことも難しくなります.

富士山山頂の風速
気象庁観測データより作成(1991-2020年)

 富士山を登るということはこのような厳しい環境の中に身を置くことになるのです.

初心者が富士山に登るにはどのような作戦が必要か

 富士山がどのような点で登山者に厳しいのかを紹介しました.ではこれらの点を踏まえて登山者(特に初心者)が富士山に登るにはどのような作戦が必要かを考えていきます.

初心者におすすめのルートは富士宮ルート

 まず初心者が富士山に登るにはどのルートがよいのでしょうか?

 ここで改めて富士山の登山データをおさらいしてみます.

富士山の登山ルート比較
出典:富士山オフィシャルサイト http://www.fujisan-climb.jp/trails/index.html

 登山道にも若干の違いはありますが基本的にはどのルートもそれほど難易度が高くはないので純粋に距離・標高差・行動時間で考えていきます.そうすると登山道毎の難易度は

富士宮ルート>>吉田ルート須走ルート>>御殿場ルート

となります.体力や登山に自身のない人は富士宮ルートを選ぶのが無難でしょう.

日程は五合目1泊2日がおすすめ

 正確なデータではありませんが,一般的には富士山の登頂率は7割程度と言われています.先ほど紹介した富士山の3つの厳しさのうち最も登頂失敗に影響を与えるのが「空気の薄さ」だと考えられます.

 標高差や距離などの体力的な面については事前のトレーニング行程の分割適切な歩行ペースなどでカバーすることができます.また気候については登山日の選択防寒具の準備で対策ができます.

 一方で空気の薄さによる高度障害についてはどれだけ準備をしていても,あるいはどれだけ山に慣れていても一度起こると高度を下げる以外に対策がありません.対策として事前に準高所(1500~2500m)に滞在し高度順応しておくという方法があります.

 一般的に富士山を登山する人は下の3つの行程のいずれかになると思います.

①日帰り登山②五合目1泊2日③八合目1泊2日
メリット・1日で登頂できる・しっかりと高度順応できる・行程をおおよそ2分割にできる
・ご来光を狙える
デメリット・体力的にハード
・高山病のリスクが高い
・2日目の行動距離は日帰りと
 ほぼ同じ
・ご来光は難しい
・高山病のリスクが高い
参考:登山の運動生理学とトレーニング学,東京新聞,山本正嘉

 高山病という観点では五合目1泊2日が,体力的な観点では八合目1泊2日が優れています.ですが前述のように登頂率に一番影響を与えるのは高度障害であるため筆者としたは①をおすすめします.もし体力的に不安ということであれば,2泊3日という行程として五合目と八合目に1泊ずつするというのもありだと思います.

まとめ

 初心者が富士山に登るにはどうしたらいいかを考えてきました.筆者としては「富士宮ルートを登る」「五合目1泊2日の行程にする」をお勧めします.

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