クライミングやバリエーションルートを登る方は御在所岳前尾根というルートを聞いたことがあるでしょう.御在所岳前尾根は難易度やコースの長さともにアルパインクライミングの入門ルートとして有名なのです.
本項ではアルパインクライミング経験2年目であり,初級者~中級者である筆者が
- そもそも御在所岳を知らない!!
- ジムでクライミングをやっているけど岩場にも行ってみたい!!
- 登山をしているけどバリエーションルートにチャレンジしてみたい!!
- アルパインクライミングをやっているけど関東在住で前尾根に行ったことがない!!
といった人たちを対象に初心者向けの入門アルパインクライミング/バリエーションルートである御在所岳前尾根について紹介していきます.
御在所岳って?
関西地区や東海地区に住んでいる人は御在所という名前を聞いたことがあるでしょう.
御在所岳は,滋賀県と三重県にまたがる鈴鹿山脈にある標高1212mの山です.日本二百名山や関西百名山にも選ばれています.鈴鹿という名前は鈴鹿サーキットが有名ですね.
三重県側の湯の山温泉から山頂まではロープウェイがあり,また山頂には御在所スキー場もあるため登山以外の観光でも人気の山です.紅葉の季節にはたくさんの観光客で賑わいます.
そんな御在所岳ですが,実は一般の登山や観光だけではなくロッククライミングのメッカとしてもクライマー界隈では有名です.フリークライマーからアルパインクライマーまで,初心者から上級者まであらゆるクライマーが御在所岳の岩場を楽しみます.
御在所の岩場
御在所にはいくつかの一般登山道がありますが岩場に行くときには裏道登山道からアプローチします.裏道登山道を30分ほど歩いていると藤内小屋(とうないごや)にたどり着きます.
藤内小屋はクライマーの拠点となる山小屋で,朝に行くと岩場を目指すクライマーたちが談笑しています.土日・宿前日のみの営業ですが,1泊2食付きで4700円と日本アルプスの山小屋と比べると非常にお手頃な金額で泊まることができます.
藤内小屋からの上りはしばらくは沢沿いの岩場を登り,しばらくすると再び林の中を歩きます.
五合目の標識をこえて5分ほどあるくと藤内壁出合の看板に出くわします.ここから登山道はさらに林の中を沢沿いに歩きますが,岩場を目指すときには沢を横断して左側の沢を登ります.ここからはバリエーションルートになるのでヘルメットを装着するなど気を引き締めていきましょう.
沢を横断するときに正面に見えるのが御在所の岩場である藤内壁になります.さらに右手に見える尾根が前尾根になります.
御在所の岩場は主に藤内壁に集まっています.藤内壁には
- 一の壁
- 前尾根
- 中尾根
- 中尾根バットレス
などがあり,それぞれの実力や目的に合わせて楽しむことができます.
今回はアルパインクライミングのマルチピッチルートとして前尾根の紹介をしていきます.
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アルパインクライミングの基本的な考え方や御在所前尾根をはじめとした初心者向けルートが紹介されています.
前尾根
前尾根は一般登山道の対岸にある尾根でアルパインクライミング初心者向けのルートとして昔から登られています.関西や東海の地区のアルパインクライマーは前尾根で練習をしてから日本アルプスなどのルートに挑戦するのが一般的です.
なので前尾根はアルパインクライミングの登竜門ともいえるルートです.
前尾根はP7からP1まで7つのピークで形成されますが一般的にはP3までをマルチピッチで登り,最後にP2の櫓(ヤグラ)を登ったのち懸垂下降で降りてP3/2のコルから下山します.なれたパーティであれば3時間程度,初心者を含むパーティであればアプローチも含めて1日がかりになります.
アプローチ
アプローチは先ほどの藤内壁出合から藤内壁の方に沢を登っていると沢の分岐とともに下の写真のような巨大な岩がでてきます.この岩はテスト岩と言われており前尾根や一の壁に行く前に練習をすることもできます.
このテスト岩の横を通って前尾根の取付に行くことができます.
取付には十分なスペースがあるので取付でハーネスの装着やギアの準備を行いましょう.
P7 Ⅴ-~Ⅴ
P7は最初の核心です.前半と後半に分かれますが,1Pでも行けますし途中でボルトがあって支点を作れるのでピッチを切ることもできます.
前半部分はややかぶり気味のクラックです.クラック以外にもホールドが沢山ありますが傾斜もあるので最初は苦労するかもしれません.後半部分の核心は高度感のあるカンテです.足があがってしまえば簡単ですが足をあげるまでに苦労するかもしれません.前後にボルトが打ってあるのでしっかりランニングをとって登りましょう.
P6 Ⅳ
P6は複数のルート取りができますが一般的にはリッジのルートを登ります.このルートはフリクションをしっかりと効かせて体重を乗せる必要があるので初心者にはやや難しいかもしれません.
P7とP6は巻き道があるのでクライミングに自身のない人はとばしていくこともできます.
P5 Ⅲ
P5はなだらかな横隔を登ります.距離も短く時間短縮のためロープを出さずに登るパーティも多いです.
P4 Ⅲ
P4は前尾根の中でもたくさんのルート取りができる場所です.一般ルートは谷川の横隔を登るルートです.グレードは低めですが落ちると谷底まで一気に落ちるのでしっかりとランニングをとっておきましょう.なお,P4にはボルトがほとんどないのでカムデバイスを持っていく必要があります.
右の写真はすべり台と言われるバリエーションルートでクラックに沿って登っていきます(Ⅳ~Ⅴ).後半は高度感があります.
P3
P3もグレードは高くありませんが長いルートです.前半最後のチムニーはフリクションをしっかりきかせてステミングで登りましょう.後半はなだらかなスラブになっておりフリクションがしっかりききます.
P2 櫓(ヤグラ) Ⅳ
P3まで登り終わるとP2/3のコルに出ます.ここから裏道登山道に向かって下山することができます.
ですが,体力が残っているパーティはぜひP2(ヤグラ)を登ってみてください.ほぼ垂直に立っていますがクラックの中にホールドが沢山あるので,ここまで登ってこれたパーティはそれほど難しく感じないでしょう.
ヤグラの頂上まで行ったらヤグラの頂上からはこれまで登ってきた前尾根と伊勢湾が見渡せます.最後は懸垂下降でコルまで戻ります.
まとめ
アルパインクライミングの入門ルートである御在所岳の前尾根について紹介してきました.これから岩場に行きたいクライマーも,これからバリエーションルートに行きたい登山者も満足できる素敵なルートです.ぜひ行ってみてください!!
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