登山計画書の作り方 ~槍ヶ岳・表銀座編~

登山
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登山計画書って?なぜ計画書が必要なの?

 登山計画書(山行計画書)という言葉を聞いたことがありますか?

 登山をする人は登山の前に必ず作成しなければならないものです.言葉の通り登山の計画を記したもので,登山者の情報,登山の行程,装備,緊急連絡先,,,などが記載されたものになります.登山届ともいわれていて登山をする前に登山口の登山ポストに投函します.あるいは最近はインタネットやアプリなどから提出する方法もあります.

 計画していた山行が無事に終わったときには登山計画書の出番はありません.しかし,近年山岳遭難の件数が増えているのも事実です.もし自分が遭難したら??そんな場合に救助の手助けをしてくれるのが登山計画書です.提出された計画書は,警察や救助隊がそこにある情報を参考にし迅速な救助につながります.

 長野県では「長野県登山安全条例」,岐阜県では「岐阜県北アルプス地区及び活火山地区における山岳遭難の防止に関する条例」といって特定の山域では登山計画書の提出が義務付けられています.この山域にいくときはもちろんですが,これ以外の山域でも自分の安全のため登山計画書の作成することを心がけましょう!(参考リンク:長野県庁HP 登山計画書を届け出しましょう岐阜県庁HP 山岳遭難防止

登山計画の作成の流れ

 登山計画書はあくまでも登山計画の一部をわかりやすく記載したものにすぎません.計画書を作るにあたって適切な登山計画を作ることが重要になってきます.ここでは登山計画の作成の流れをまとめていきます.

①行く山を決めよう!

 登山計画を立てるにあたって一番初めに行うことはどの山に行くかを決めることです.同じ山でも複数のコースがあることがあり実際にいくルートを決めるにはいくつか考慮することがあります.

行くルートを決めるための要因
  1. 体力
  2. コースの難易度(グレーディング)
  3. 日数

1.体力
 登山では通常のスポーツとは違い1日に何時間も動くことになります.また平行運動ではなく登降運動であるため運動量は多くなるため,行きたいコースがあっても体力が十分でなければ自力下山ができなくなるなど遭難につながります.自分の体力にあった登山コースを選ぶ必要があります.
 同じ山に登るのでもコースによっては必要な体力が変わってきますし,一般的には高い山になるほど,長いコースになるほど必要な体力は増えてきます.自分の体力にあった山域,コースの選択が必要になってきます.

2.コースの難易度(グレーディング)
 もう一つ重要な点は,自分に合った難易度であることです.剱岳など代表的ですが,鎖場や岩稜帯のトラバースルートなど三点支持ができないと危険なルートがあります.また危険な個所がワンポイントだけなのか,あるいは何か所もあったり,何時間も続いたりなども考える必要があります.コースの難易度に実力が合わない場合には即刻滑落につながり非常に危険です.

3.日数
 多くのコースでは目安となる日数が掲示されています.例えば土日の2日しかないのに二泊三日のコースを強行するなどは危険な計画になります.もちろん同じコースでも一泊二日で行ける人もいれば二泊三日必要な人もいます.そのため一概には言えませんが無理のない日程で計画を立てることが必要です.

様々な山域で,体力を1~10の10段階,グレーディングをA~Eの5段階に分けたグレーディング表が作られています.ウェブ上で見ることができるのでぜひ計画の参考にしてみてください.

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出典:長野県庁HP 信州 山のグレーディング

秋田県「秋田県の山岳グレーディング」
山形県「やまがた百名山のグレーディング(やまがた山)」
栃木県「栃木県 山のグレーディング」
群馬県「群馬県 山のグレーディング」
山梨県「山梨 山のグレーディング」
新潟県「新潟 山のグレーディング」
長野県「信州 山のグレーディング」
富山県「山のグレーディング」
静岡県「山のグレーディング」
岐阜県「岐阜県山のグレーディング」

②必要な装備を確認しよう!

 ①で行きたい山,コースが決まったら次は装備の確認を行います.装備は行きたい山域,各自の技量,季節,また山行スタイルによって変わってきます.基本的なウェアや登山靴,トレッキングポール,ヘッドライトなどの基本ギアに加えて,宿泊する場合にはスタイルによって必要な幕営用具が異なります.

登山に必要な装備
  • ウェア
  • 基本ギア
  • 携行品
  • 幕営用具
  • 非常用装備
  • 登攀ギア
(モンベル)

 登山に必要な装備は,必要なものを持っていくことは当然ですが,荷物を少しでも軽くするために不要なものを置いていくことも非常に重要になってきます.必要なもの,不要なものは各々で変わってきますので参考を重ねて自身の装備を詰めていきましょう!


 下のリンクではじめての登山&テント泊で必要な装備について紹介しています.

③緊急時の対応を決めておこう!

 ここまでで登山計画の大部分は完成です.ですがもう一つ非常に重要なことが残っています.それは緊急時の対応を決めておくことです.具体的には,予定通り参考が進まなかった時のエスケープルートや制限時間,遭難したときにどこに連絡するか,また自身の緊急連絡先などです.

決めておくべき緊急時の対応
  1. エスケープルート
  2. 引き返しの制限時間
  3. 緊急時の連絡先
  4. 自身の緊急連絡先

1.エスケープルート
 エスケープルートとは山行が予定通りに進まずにそれ以上の進行ができないと判断されたときに選択する下山路になります.例えば「槍ヶ岳~奥穂高岳~西穂高岳へ縦走する場合に,悪天のため奥穂高岳~西穂岳への進行が困難と判断した場合に涸沢経由で上高地に下山する」といった場合,涸沢経由での下山路がエスケープルートになります.

2.引き返しの制限時間
 山岳地帯での天候は,非常に変化しやすく夏山登山では15時ころまでの幕営地の到着が推奨されています.計画では15時に幕営地に到着としていても実際の山行では計画通りにいかないことがあります.計画通りに幕営地に到着できない場合に,この時間になったら引き返す,あるいはそれ以上進まないといった制限時間を設けることで無理な山行を防ぐことができます.時には「勇気ある撤退」も必要なのです.

3.緊急時の連絡先
 道迷いや怪我など,実際に遭難したときに第三者が遭難したとわかるまでは時間がかかります.そのため遭難したと思ったときは自分で救助を呼ぶ必要があります.地元警察など緊急時の連絡先を参考前に確認しておく必要があります.

4.自身の緊急連絡先
 自身が遭難したときに警察のほかに自分の身寄りにも連絡がいく必要があります.職場への連絡やその他各種調整を行う必要があります.このような対応をする人をあらかじめ決めておき依頼しておく必要があります.

実際に計画書をつくってみよう!

 ここまで登山計画の立て方を紹介してきました.ここからは実際に登山計画書を作成していきます.長野県の登山計画書のテンプレートを使用して実際に「槍ヶ岳 表銀座ルート」の登山計画書を作成してみます.

計画書2-1

①署名
 記載年月日,住所,氏名の記載を行います.

②目的の山
 目的の山域の該当するところにマークを入れます.今回は■を入力しています.また主な山岳の名称として「槍ヶ岳」を入力しています.ここは行く山すべて(燕岳,大天井岳,西岳,槍ヶ岳)を記載してもいいですし,目的となる山をひとつだけでも問題ありません.

③参加者
 参加する全員の名前,性別,年齢,住所,連絡先,緊急連絡先,山岳保険の有無を記載しましょう.またリーダーは山行中の最終的な意思決定を行う立場なのでわかるように一番上に書きましょう.緊急連絡先は父母や配偶者などなるべく近い関係の人が望ましいです.もし山岳会に所属している場合には遭難時に救助の手伝いなども行う場合があるので連絡先も記載しましょう.

④行程
 行程では日にちごとのコースおよびコースタイム,宿泊場所を記載します.コースは目印となるところや分岐点などを記載します.コースタイムについては昭文社の山と高原の地図を参考にしています.

 

 行動予定を記載後は想定通りに行程がいかなかった場合にどのように行動するかを記載します.今回は①二日目に進めなかった時に常念岳経由で下山,②二日目に水俣乗越まで進んだものの天候悪化や怪我,疲労などで槍ヶ岳山荘までの3時間の行程が進めない場合に水俣乗越から下山,③槍ヶ岳アタック日に行程が遅延し槍ヶ岳山荘到着が遅くなった場合に槍の穂先へのアタックを見送る,などを記載しています.これらは各々のパーティでどのようなトラブルア想定しうるかを考えながら記載してください.

山と高原地図 - 地図と旅行ガイドブックの昭文社グループ
『山と高原地図』は、50年以上のロングセラーを誇る、登山・ハイキング地図の定番です。 谷や尾根、等高線や登山道を掲載し、毎年改訂を加えて、全国約1500の山々を紹介。著名な山岳随筆家である深田久弥氏選定の「日本百名山」も完全網羅しています。 調査執筆者には、それぞれの山域を研究する登山家を起用。執筆者自身による実踏調査...

⑤装備
 最後に装備になります.装備は持っていく装備をすべて記載しましょう.食事は日数も記載したほうがよいでしょう.

 長野県の登山計画書を元に槍ヶ岳表銀座ルートの登山計画書を作成しました.今回は長野県の登山計画書を使用しましたが提出する計画書には決まった様式はなく上記の必要事項をみたしていれば問題ありません.また今回は割愛しましたが概念図なども添付するとよりわかりやすい計画書になるかもしれません.
 作成した計画書は,登山ポストに提出する分,自分で確認する分,緊急連絡先の人に渡す分の合計3部用意しましょう.自分や緊急連絡先の人が見る分には画像やPDFなどでも構いません.下記に計画書のテンプレートのリンクを貼っておくので参考にしてください.

登山計画書を届出しましょう/長野県

おわりに

 登山計画書の説明,登山計画の立て方,計画書の作成の流れについて紹介してきました.登山は計画を立てる段階から始まっているといっても過言ではありません.しっかりと計画を立てて楽しい参考にしましょう!!

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