横岳西面 大同心北西稜|厳冬期の大同心にフリークライミングで登る

アルパインクライミング
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 冬の南八ヶ岳は赤岳鉱泉や行者小屋をベースに様々なアクティビティを楽しむことができるため夏以上に多くの人が集まります.その中で人気が高いのが赤岳主稜や阿弥陀岳北稜などの岩稜バリエーションルートです.

 今回はそんなバリエーションルートの中から八ヶ岳で数少ない岩壁である大同心をフリークライミングで登ることができる大同心北西稜を紹介していきます!

大同心北西稜
  • 大同心をフリークライミングで登ることができる数少ないルート
  • 全7ピッチのロングルート
  • 裏同心ルンゼから継続することでさらに充実

八ヶ岳のバリエーションルート

 冬の八ヶ岳は冬期登攀のゲレンデとも呼べるようなエリアで,入門的なものから難易度の高いものまで20本にもおよぶバリエーションルートが存在しています.日本アルプスと比べたときにより近いアプローチで,赤岳鉱泉などの小屋をベースとして本格的な冬期登攀を楽しむことができるためシーズンになると多くのクライマーで賑わいます.

 人気のルートとしては,入門的なものとして阿弥陀岳北稜や赤岳主稜,初中級者向けとして石尊稜や中山尾根,上級者向けとして阿弥陀北西稜,大同心雲稜などがあり時として取付きで渋滞することもあります.

 このような八ヶ岳のバリエーションルートは,基本的には雪稜で所々にある岩峰or岩稜のクライミングを楽しむという性質のものが多くなっています.ですが横岳西面にある大同心・小同心に限っては岩壁ともいえるようなクライミングが連続するルートが集まっています.

大同心北西稜

 大同心というと雲稜が有名で無雪期には今日的なクライミングが楽しめる中級者向けの人気ルートですがアイゼンでの登攀になると多くの場合,人工登攀を交える厳しいルートとなります.これは雲稜に限らず大同心のルート全般的に言えることです.

 ですが,そんな大同心の中で唯一アブミに頼ることなく全ピッチをフリークライミングで登れるルートが大同心北西稜です.

大同心北西稜

 大同心北西稜は大同心のスカイラインを登るルートで,全7ピッチと大同心の中では最長となります.取付きは裏同心ルンゼの終了点とも近いため初冬には裏同心ルンゼから継続されることもしばしばあります.

アプローチ

 大同心,小同心へのアプローチのベースは赤岳鉱泉です.赤岳鉱泉から硫黄岳への登山道を歩き出すと1つ目の沢(大同心ルンゼ)に入るところで標識があります.踏み跡に沿ってルンゼを歩いていくと途中から大同心稜に上がり,引き続き尾根上を歩いていくと赤岳鉱泉から1時間ほどで大同心の基部に到着します.

 裏同心ルンゼ側に大同心の基部をトラバースします.5分ほど下ると立ち木があり,ここが取付きです.

大同心北西稜アプローチ
北西稜取付き

ルート紹介

 ルートは歩きのピッチも入れて全7ピッチです.4ピッチ目と7ピッチ目が核心ピッチですが支点も整備されており厳しいながら安心して登れます.所々にカムでプロテクションをとることもできます.

1P目 Ⅳ

 1P目は大同心の北西面へアプローチするピッチです.ピナクルを目指して草付きから岩場を登ります.壁とピナクルの間を通り,25mほどロープを伸ばすとテラスとなりピッチを切ることができます.

北西稜1P目 ピナクルを目指して登る

 岩のパートは数mと短いですが傾斜も強くプロテクションも取りにくいため朝一番だと緊張します.

2P目 歩き

 2P目はほぼ歩きのピッチで100mほどコンテニュアスで登ることになります.1P目の終了点から岩壁基部を左にトラバースしていきます.

北西稜2P目

 カンテを巻きルンゼに入ると岩と草付きの混じった緩傾斜の登りとなります.岩場になる手前の残置支点でピッチを切ります.

北西稜2P目 岩壁手前のビレイ点まで緩傾斜帯を登る

3P目 Ⅲ

 3P目から大同心北西稜に上がります.リッジを目指して易しい岩場を登ります.

北西稜3P目

4P目 Ⅳ~Ⅳ+

 4P目はルート全体を通して最初の核心ピッチです.正面の凹角を登りますが思いのほか傾斜が強く手こずります.前半は岩が主体でしっかりとしたホールドを使いながら強傾斜部を越えていきます.ハンガーボルトもありカムでも支点が取れます.

北西稜4P目 出だしは傾斜の強い凹角

 後半部分は岩と草付きが混じりの壁で草付きにアックスをきめながら高度を上げていきます.ポイントポイントでハンガーボルトはありますが全体的にはランナウト気味で緊張します.30mほどで小テラスとなりピッチを切ります.

北西稜4P目 後半はプロテクションの乏しい草付き帯

5P目 Ⅳ~Ⅳ+

 5P目は一度大同心の正面側にでてから凹角を登ります.難しいところは前半数mに集まっておりここを越えればあとは快適です.

北西稜5P目 出だしのルーファイが難しい

6P目 歩き

 6P目は最初樹林帯を登ります.ここを抜けると綺麗な雪稜となり正面に大同心の頭が見えてきます.

北西稜6P目 雪稜歩き

7P目 Ⅴ+

 ルート全体を通しての核心となるのが7P目です.短いながら100度ほどに被ったクラックを登ります.ハング下にカムをきめてからハンドジャムで体を上げます.2手ほどジャミングで堪えると上のクラックの中にアックスが決まりるので一安心です.あとは細かいスタンスを見つけてパワームーブでハングを越えていきます.強度としては高いですが,プロテクションもよいので思い切って登っていきましょう.

北西稜7P目 被ったクラック

 ハングを越えると傾斜は落ちすぐに大同心の頭です.頂上には終了点がないのでスリングなどを使ってピナクルでビレイします.

まとめ

 八ヶ岳の中級者向けルートである八ヶ岳大同心北西稜を紹介してきました.難しいルートですが連続するクライミングで充実すること間違いなしです.支点も整備されているため思い切って挑戦してみるのもおすすめです.

大同心北西稜は支点も整備され一般的なルートですがトポが少ないルートです.登山大系には大同心北西稜をはじめ八ヶ岳の多くのルートが掲載されておりおすすめです.

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