錫杖岳左方カンテ|錫杖岳王道ルートでアルパインクライミング入門

アルパインクライミング
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 錫杖岳にある左方カンテは無雪期のアルパインクライミングが満喫できるルートです.岩の弱点を絶妙についた自然なラインで内容は面白く,ルートのほとんどをナチュラルプロテクションで登れるのも現代的で魅力的です.ピッチのグレード的はⅤ級ほどで登りやすくアプローチも近いため,しっかりとしたリーダーの下であれば初めてのアルパインクライミングにもおすすめです.

 今回はそんな左方カンテについて紹介していきます.

左方カンテ
  • 錫杖岳人気No1ルート
  • 入門的なグレード感で錫杖岳で一番最初に登りたいルート
  • 弱点をついた内面登攀から露出感のあるフェイスまで幅広いクライミング
  • ルート中のボルトは1本,残置は数本でほとんどナチュラルプロテクションで楽しめる
  • ビレイ点はしっかりとしたハンガーボルトがあり安心して登ることができる

錫杖岳

 錫杖岳は日本百名山のひとつである笠ヶ岳の南に延びる稜線に位置する標高2168mの山です.一般的な登山道はなく,登山者にとってはあまり馴染みのない山かもしれません.

 しかし,錫杖岳には前衛フェイスをはじめとした巨大な岩壁がありクライマーにとっては本格的なロッククライミングが楽しめる山になります.また新穂高温泉から2時間ほどで岩場にたどり着くというアクセスの良さも魅力のひとつかもしれません.

 初心者でも楽しめるアルパインクライミングの入門的なルートから一流のフリークライマーが苦労するような高難度のものまで多彩なルートがあり,錫杖岳には春から秋の週末には多くのクライマーが集まります.

左方カンテ

 左方カンテは攻撃的な前衛壁を錫杖沢の方から見たときに左のカンテのラインを登るルートです.実際には凹角やチムニーなど絶妙に弱点をついたラインになっています.終了点を除いてルート中の残置支点は非常に少なくルートの大部分をカムやナッツなどのナチュラルプロテクションで登ることができます.

 ルート内容の充実度,グレード感などから錫杖岳で一番人気のルートと言えます.シーズンになると渋滞ができるくらい賑わいます.

アプロ―チ

 左方カンテは錫杖岳の前衛フェイスと呼ばれる岩壁にあります.新穂高にある槍見館脇からクリヤ沢の登山道を登り錫杖沢出合まで1時間半ほど登ります.そこからさらに1時間ほど錫杖沢を登ると前衛フェイスの基部に到着します.アプローチの詳細については下記リンクで紹介していますので参考にしてください.

装備

 左方カンテを登るのに必要な装備を紹介します.

  • 50mダブルロープ
  • アルパインヌンチャク 120cm 4本,60cm 8本
  • キャメロット #0.4, 0.5, 0.75, 1, 2, 3(0.4~2は2セット)
  • n個人登攀具(ハーネス,ヘルメット,クライミングシューズ,確保器,,)
  • ハーケン,捨て縄(敗退用)

 自然なラインですが屈曲はあり,下降も懸垂下降になるのでダブルロープ推奨です.長さは50mあれば十分です.ルート中にボルトは1本,残置のハーケンは数本しかなく基本的にはナチュラルプロテクションで登ることになるのでカムやナッツなどは必携です.1セットでも登攀可能ですが,プラスアルファで持っていくと安心です.下降時は比較的しっかりとした支点が残置されていますが,シーズンはじめなどは劣化もあるので捨て縄は持っていく必要があるでしょう.

 どんなカムがいいかについては下記のリンクで解説していますので興味のある人は覗いてみてください!

ルート紹介

 左方カンテは全9ピッチで構成されるルートで.全部登ると前衛フェイスの頂上に抜けることもできます.ただ8ピッチ目,9ピッチ目は岩も脆く最後の2ピッチは割愛して懸垂下降で降りるパーティが多いです.懸垂下降する場合には左方カンテのラインではなく,途中から注文の多い料理店のラインを降りるのが自然になります.

左方カンテ取付き広場の目印

1P目 Ⅲ級 40m

 1P目は前衛フェイスの左端にあるルンゼから登り始めます.2本あるルンゼのうち手前の方が易しく登れます.先行パーティがいる場合には取付き含めライン上も落石が起きやすいので十分に注意しましょう.

2~3P目 Ⅳ級 30m,Ⅴ級 20m

 2-3P目はリンクすることも可能です.2P目も引き続き凹角を登りますが,1P目と比べると傾斜が強くなります.クラックは発達しているのでプロテクションは十分に取れます.15mほどで凹角を抜けると易しいフェイスを登りピナクルでピッチを切ります.

 3P目は前半の核心部となるピッチでピナクルに立ち上がりスタートします.このピッチはカムでの支点がとりにくく残置ハーケンに頼ることになります.小ハング越えが核心ですが,ハング上にはガバが豊富で思い切って超えていきましょう.

4~5P目 Ⅱ級 20m,Ⅳ+ 30m

 4P目は歩きのピッチです.通常は3ピッチ目,あるいは5ピッチ目とリンクします.

4P目の歩きと5P目のチムニー

 5P目のチムニーはホールドは豊富ですが狭いためザックが引っ掛かり苦しい所です.チムニーを抜けると大木のある日陰のテラスにあがります.

5P目

6P目 Ⅳ+ 30m

 6P目はチムニー横の傾斜の強いフェイスを登っていきます.残置支点はなく,小さいカムでプロテクションをとりながら登っていきます.細かい部分もありますがクラックも利用しながら高度を上げていきましょう.フェイスを抜けると前衛フェイスのカンテにある大テラスまで上がります.

7P目 Ⅴ+級 40m

 このピッチの出だしに左方カンテ唯一のボルトが打ってあります.7P目は5P目と同じようにチムニーですが出だしにチョックストーンがありこれを越えるまでがルート全体を通しての核心です.左の小垂壁を越えるか,素直にワイドクラックを登るか悩まされます.筆者はチムニー登りで体を上げチョックストーンを取りに行きました.慣れない人はハンガーボルトを利用してのA0,A1で超えるのも一つの手です.

左方カンテの核心ピッチ

 チョックストーンを越えた後は,引き続きチムニーの内面登攀ですがホールド・スタンスは豊富でぐいぐいと高度を上げることができます.クラックが縦に3本ほどありプロテクションにも困りません.

内面登攀

 フェイスを抜けると高度感のあるカンテに出ます.左のフェイスに逃げることもできますが,カンテにもホールドは沢山あるのでよく見て登りましょう.2畳ほどの広いテラスでピッチを切ります.このテラスは混みあうことが多いので譲り合いながら登っていきましょう.ここから上のピッチは岩が脆いのでここでルートを終了するパーティも多いです.

8P目 Ⅳ+級 40m,9P目 Ⅲ級 40m

 8P目はフレーク状のフェイスを登っていきます.ホールド・スタンスともに豊富にありますが,岩が脆く岩を壊さないように注意しながら登りましょう.

8P目 もろいフェイス

 ブッシュも利用しながらフェイスを30-40mほど登ると立木のある小テラスでピッチを切ります.

8P目 後半部

 最終ピッチはブッシュ帯の中にある易しい岩場を登っていきます.見晴らしのいい広いテラスで実質の登攀は終了となります.この後は通常は懸垂下降で降りますか,前衛フェイスの頂上まで歩いて抜けることもできます.

最終ピッチ

 下降は懸垂3回ほどで大テラスまで下り,その後は懸垂2回で注文の多い料理店の取付きまで下りることができます.

まとめ

 錫杖岳の人気No.1ルートである左方カンテについて紹介してきました.ルートの内容は素晴らしく充実したクライミングを楽しむことができます.何度はほどほどでプロテクションもよいのでしっかりとしたリーダーがいれば初心者でも十分挑戦できるルートです.ぜひトライしてみてください!

 トポに関しては日本の岩場」が錫杖岳のいろいろなルートが載っていてます.そのほかにも穂高や劔周辺もたくさん載っているのでおすすめです.

 アルパインクライミングルートガイドはルート数は少ないですが左方カンテなど人気のルートはピッチ毎の情報がより詳しく載っています.初めて行く場合にはとてもおすすめです.

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