「日本で難しい山は?」
こう聞かれたらいくつか候補があがりますが,間違いなく奥穂高岳も候補のひとつに入るでしょう.
奥穂高岳は日本第3位の標高を持つ山で,前穂高岳,西穂高岳,北穂高岳,明神岳などと穂高連峰を構成します.滝谷や奥又白,屏風岩など日本有数の岩場をもち,穂高連峰自体も険しい山岳となります.とはいえ無雪期の一般道はしっかりと整備されており今日となっては多くの登山者に登られています.
しかし真冬となると話は別です.岩は雪に覆われアイゼンを絡ませ,逆に凍てつく氷雪面はアイゼンをはじきます.もちろん3000mの稜線は人が過ごすには過酷で,しっかりと技術と経験と精神力を持った一部の登山者しか受け付けません.
今回はそんな奥穂高岳に冬期でも比較的安全に登れるルートである涸沢岳西尾根を紹介していきます.
目次
厳冬期の穂高連峰に登る
無雪期に穂高岳を登るにはいくつかのルートがあります。奥穂高岳であれば涸沢からザイテングラートを使うか、白出沢から直接コルまであがるかです。ですがいずれのルートも雪崩の危険があるため雪の積もった厳冬期には異なるルートを選択します。奥穂高岳の場合は涸沢岳西尾根を利用して涸沢岳から縦走するのが比較的リスクの少ないルート選択です。これは奥穂高岳に限ったことではなく雪の多い山岳地域ではよくあることです。
涸沢岳西尾根
涸沢岳西尾根はその名の通り涸沢岳の西側に伸びる尾根で白出沢の右岸にあります。穂高岳の稜線にダイレクトに上がれる数少ない尾根でピークハントだけではなく、縦走のエスケープや滝谷へのアプローチなどにも使われます。
奥穂高岳のピークハントであれば順調に行けば2泊3日、ラッセルが深ければ3泊4日程度の行程になります。
ルート紹介
ここからは涸沢岳西尾根から涸沢岳経由で奥穂高岳に行くルートを紹介していきます。
新穂高温泉~涸沢岳西尾根取付き
涸沢岳西尾根には新穂高からアプローチします。登山指導センター前の駐車場に車を停めて歩きだします。
2時間ほど歩くと途中穂高平避難小屋を過ぎ白出沢出合に到着します。
出合いからあがって最初にある尾根が涸沢岳西尾根です。登山道脇に「トウヒ」の札がかかった木と大量の赤テープがあるのでこれご取り付きです。
~2400m付近幕営適地
尾根に上がってからは緩傾斜と急登を繰り返しながら4-5時間登った2400mほどで開けた箇所にでるのでここが初日の幕営地です。
10張ほど張れる平坦地があり、その他その前後の尾根にところどころ幕営可能個所があります。
~蒲田富士【第一核心】~F沢のコル
2日目は2泊3日の行程であればピークまでのピストンで長丁場になります。余裕のある行程なら穂高岳山荘まであがります。
前日に引き続き樹林帯の尾根を上がり2600m付近まで登ると西尾根の本筋に乗り上げます。ここは森林限界も越えており、下山時に視界が悪いと迷うポイントなので赤旗などの目印をつけておきましょう。
雪稜を進むとまもなく蒲田富士の登りになります。蒲田富士は南側のルンゼから登っていきます。傾斜があるのでパーティーの実力やコンディションによってはロープを出しましょう。
蒲田富士に登ると傾斜の落ちた斜面を登ります。このあたりは主に北側、時には南側にも雪庇がてきる両雪庇で有名なので十分に注意して進みます。見とれるような雪稜を歩くとすぐにF沢のコルに到着します。
~涸沢岳【第二核心】~白出のコル(穂高岳山荘)
F沢のコルからの登りは2つ目の核心です.稜線上には100mほどの岩壁がありこれを巻く形で南側のルンゼを登ります.雪崩のリスクが高いと判断できるような場合にはルンゼには入らずに岩稜部分を登ります.岩稜部分は傾斜も強くロープの使用も検討しましょう.
急な登りを終えると涸沢岳までは傾斜の落ちた稜線を歩きます.滝谷側が切り立っておりところどころ雪庇を形成しているので白出沢側をトラバース気味に歩いていきます.
小さな岩稜を越えつつ長い稜線を進んでいくと涸沢岳にたどり着きます.ここから穂高岳山荘のある白出沢のコルまでは15分ほどで下れます.年末年始くらいには穂高岳山荘は雪に埋もれています.
~奥穂高岳【第三核心】
白出沢のコルからはいよいよ奥穂高岳のピークを目指します.出だしの100mほどが傾斜も強く無雪期同様に核心です.
はしごを2登り氷結したルンゼをしっかりとピッケルとアイゼンの前爪を効かせて登っていきます.状態が悪ければロープの使用は検討しましょう.また下降時にはピナクルなどを利用しての懸垂下降が可能です.
出だしの岩壁を登り終えると見晴らしのいい稜線に出ます.少し歩くとようやく奥穂高岳の山頂が視界に入ります.
山頂直下の岩峰は西側から巻いて雪壁を登りますが,傾斜も強く雪面も硬いため緊張します.20mほどフロントポイントで登ると山頂はすぐそこです.
雪壁を登り終えるとエビのしっぽがたっぷりとついた穂高神社の嶺宮があなたを待っています.
下降も登りと同様,山頂直下のクラストした雪壁,白出のコルへの下り,F沢のコルへの下り,蒲田富士からの下りが核心なので登り以上に注意しておりましょう.いうれもピナクルなどで支点が取れるので不安がある場合には懸垂下降をするようにしましょう.
まとめ
厳冬期に奥穂高岳に登頂するルートとして涸沢岳西尾根を紹介してきました.日本第三の山に登るルートなので厳しさはありますが,決して求められる技術は基本的なもので難しいものではありません.他の山でしっかりとトレーニングをして挑戦してみてください!!
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こちらはアルパインクライミングのルート集ですが,涸沢岳西尾根であれば載っています.ご検討ください.
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