八ヶ岳のバリエーションというと「冬だろ!!」というイメージがありませんか?
もちろん八ヶ岳の冬期登攀はとても魅力的です.
でも,八ヶ岳にもちゃんとした無雪期のアルパインクライミングが楽しめるルートがあるんです!!
今回は北八ヶ岳の景色を見ながら静かなクライミングが満喫できる稲子岳南壁左カンテルートを紹介します.
稲子岳
稲子岳は八ヶ岳の主稜線からは少し離れて東天狗岳の北東に位置する2380mの山です.
この稲子岳ですが,一般の登山や縦走で登られることはまずありません.稲子岳に行く人のほぼ全員の目的がクライミングでしょう.
硫黄岳から天狗岳にかけての八ヶ岳の稜線を歩いていると,主稜線から東側に飛び出る形の岩壁がみえてきます.これが稲子岳の岩壁です.稲子岳の岩壁は南壁と東壁に分けることができ,いずれも先人たちによって多くのルートが開拓されています.
左カンテルートは,稲子岳の中でも最も多く登られているルートでしょう.150mほどの高低差を北八ヶ岳の緑を背中に感じながら登っていくとても気持ちのいいルートです.主稜線から外れていることもあり,夏山特有の喧騒もなく静かなクライミングを楽しむことができます.
南壁左カンテルート
稲子岳南壁左カンテルートは稲子岳岩壁の中で現在も多くの人が登る人気のルートです.
全5ピッチで,フェイスあり,凹角あり,チムニーあり,クラックあり,カンテありのひとつのルートで様々なクライミングを楽しむことができます.ピッチグレードはⅢ+程度なのでクライミング経験が浅い人でも十分に楽しむことができます.
稲子岳南壁には左カンテ以外にも様々なルートがありますが,他のルートは現在はあまり登られていないようで挑戦する際には落石や崩落には十分に注意する必要があります.
装備
要所要所のビレイポイントにはペツルのボルトがあり,途中には古いハーケンが打ってあるのでそこで中間支点をとることができます.岩角にタイオフして支点を作成することもできますが脆い岩もあるので十分に注意しましょう.#0.75~3程度のサイズのカムがあるとより安心です.
アプローチ
稲子岳には黒百合ヒュッテから中山峠をこえてアプローチする方法と,しらびそ小屋からアプローチする方法の2つがあります.今回は中山峠からのアプローチを紹介します.
中山峠を10分ほど下ると,右上の写真のような緑ロープが張ってありその上に「注意」の看板があります.このロープをこえて稲子岳方面に進みます.中山峠からの下りは一般道ですが,それなりに傾斜があるので注意しながら進みましょう.
緑ロープをこえるとしっかりと踏み跡がある道を進みます.途中大規模に崩落している箇所があるので道を見失わないようにしましょう.よく見ると正しいルートには赤テープが巻いてあります.
20分ほど歩くと左に岩壁がみえてきます.岩壁がみえてから岩壁に沿ってさらにトラバースしていくと下降ルートにも使われるルンゼが左前方に見えてきます.左カンテルートはこのルンゼの左岸になります.
取付のある狭いテラスには右上の写真のように目印がついた木が生えているので見落とすことはないでしょう.
1P目
目印の赤いハーケンに最初のランニングをとって登りだします.
最初のピッチはカンテの左側に沿ってフェイスを登ります.持てるホールドはたくさんありますが,岩がもろいので剥がれないことを確認しながら登っていきます.
20mくらい登るとテラスにでて,ここにペツルのボルトがあります.
2P目
2P目は凹角を登っていきます.左右の壁にスタンスがあるので足を開いてダイナミックに登っていきましょう.岩はおおむね安定していますが,落石には十分注して登りましょう.
3P目の核心のチムニーの手前にボルトがあるのでここでビレイをしましょう.
3P目
核心は3P目の出だしです.
下の写真のように左側のオフウィズス幅のクラック沿いに登るか,右側のチムニーを登ります.チムニーの方が簡単ですが,クラックの方も中にガバホールドがあるので安心です.
ここをこえると稜上にでて安定しています.階段状の岩場を進んでいって適当なところでビレイしましょう.登山体系ではチムニーをこえた後でビレイしていますがロープの余裕があれば伸ばせるだけ伸ばしましょう.
4P目
4P目(切り方次第では最終P)は凹角の中を登ったのち稜上にでます.一部立った部分があり高度感があります.古いハーケンやリングボルトが細かく打ってあるのでしっかりとランニングをとって登りましょう.
5P目
4P目を終えると一度安定した稜線にでます.
終了点は数mのボルダーサイズの岩の上にあります.左上するクラックを登っていきますが難易度はそれほど高くはありません.
混んでいる場合にはこの岩の右側を巻いていくこともできます.
上まで上がると林の手前に動物侵入防止の柵があります.この柵にそって西に進むと柵の末端から反対側に入ることができます.柵をこえた後は踏み跡に沿って下ると元来た道に戻ります.
まとめ
稲子岳南壁左カンテルートを紹介してきました.北八ヶ岳ならではの静かなクライミングを楽しめる好ルートになります.挑戦してみていかがでしょうか.
コメント