滝谷..誰が言ったかは知りませんが「飛ぶ鳥も通わぬ」と形容されるほど急峻で荒々しい岩壁が北穂~奥穂の稜線の飛騨側に存在します.新穂高から槍ヶ岳を目指したことがある人なら滝谷出合からはるか遠くにそびえたつ滝谷ドームをはじめとした滝谷の岩場をみたことがあるでしょう.
実は,そんな滝谷の岩場は剱岳と谷川岳と合わせて日本三大岩場と言われアルパインクライミングの人気エリアとなっています.今回はその中でも最も人気の高いバリエーションルートである「滝谷ドーム中央稜」について紹介していきます.
滝谷とは?
槍穂高連峰をつなぐ縦走路は日本屈指の名ルートですが,この3000mの稜線の北穂高岳周辺の飛騨側に存在するのが日本三大岩場に数えられる滝谷です.
滝谷の岩場は「飛ぶ鳥も通わぬ」と形容されるほど急峻で荒々しいものですが,そんな岩壁・岩稜もクライマーにとっては挑戦の対象として見られています.今回紹介するドーム中央稜をはじめ,クラック尾根や第4尾根など本格的なアルパインクライミングが楽しめる魅力的なバリエーションルートはこの滝谷に位置しています.
滝谷ドーム中央稜
新穂高から槍ヶ岳を目指して歩いていると滝谷出合から槍穂高の稜線を見ることができます.このときに目を見張るのが滝谷ドームでしょう.ドーム中央稜はこの滝谷ドームの中央にラインを引きます.
クライミング自体の内容も充実しており,滝谷の中ではアプローチもよいので滝谷の中で1,2位を争う人気ルートです.
一般登山道の縦走ではこのドームに登ることはなく涸沢側に巻いていきます.ですがドーム中央稜を登っていくと最後にはドームの頭にたどり着きます.
ドーム中央稜含め北アルプスのアルパインクライミングルートのトポである日本の岩場・下が改訂されました!バリエーションルートに行く人には必携の一冊です.
アプローチ
滝谷にアプローチするにはまず槍穂高の稜線に上がる必要があります.槍ヶ岳からの縦走でも西穂からの縦走でも構いませんが,一般的なのは上高地から涸沢経由で北穂高岳まで上がることでしょう.
今回登るドームは北穂のすぐ南に位置するピークで北穂から奥穂を目指して稜線を歩き出します.南稜テラスをこえた北穂分岐から奥穂側に歩き出すと最初は下りになります.下りきったところからドームを涸沢側に巻くように進むともう飛騨側にでる辺りに下りの鎖場があります.ここは北穂から奥穂への稜線で最初の鎖場なので見落とすことはまずないでしょう.
本来の縦走路はここから稜線を歩きますが,ドーム中央稜へのアプローチでは鎖場を下りきったところから滝谷側に下ります.
最初の数mは浮石の多いガレ場ですが左側には硬い岩もあり安心して下りられます.すぐに明瞭な踏み跡がでてくるのでここから先は踏み跡に沿って歩きます.
踏み跡を探しながら5-10分ほど下りていくとⅢ級程度の凹角の下降があります.この凹角下りると右の方に懸垂支点の目印となるピナクルが見えてくるのでこのピナクルに向かってトラバースしていきます.ピナクルの岩壁側に懸垂支点がありますが下降中は見えませんので下りすぎないように注意しましょう.
50mロープ1本でギリギリ足りる距離の懸垂下降をすると踏み跡に沿って緩やかな登りです.下の写真のスカイラインの裏に目指すべきドーム中央稜の取付きがあります.
1ピッチ目 Ⅴ-
ドーム中央稜は4ピッチ+歩き1ピッチから構成されており,ピッチ間の難しさの差が少なくどのピッチもまんべんなく楽しめるのが特徴です.
1ピッチ目は凹角を登っていき途中からチムニーの中に入ります.細かいホールドはありますが完全にチムニー登りに安るのでザックがあるととても奮闘的なクライミングになります.チョックストーンを超えたところにハンガーボルトのビレイポイントがあります.
2ピッチ目 Ⅳ
2ピッチ目の最初は易しいフェイスクライミングで,途中からカンテを右に行ったり左に行ったりしながら登っていきます.最後にはさび付いたリングボルトが連打されている核心のスラブが待っています.細かいスタンスにしっかり立ちこむ必要があります.明確な核心を超えたところでハンバーボルトの支点があるのでピッチを切ります.
3ピッチ目 歩き
3ピッチ目は易しい岩稜帯歩きです.4ピッチ目の取付きがわかりにくいのでしっかりと登るラインをイメージしながら進みましょう.
4ピッチ目 Ⅳ
4ピッチ目の取付きにはハンガーボルトはなく古いハーケン2枚でセルフビレイをとります.凹角にそって登っていきます.最後のチョックストーンを超えるところがうす被りになっておりパワフルなムーブを要求されます.
5ピッチ目 Ⅳ
最終ピッチである5ピッチ目も弱点をついた凹角を登ります.途中まではなんてことないクライミングですが最後の最後に核心が待っています.奮闘的なハンドクラックばち効きの小ハングをこえるとそこはドームの頭です.5ピッチ目の最後は直情するとハンドクラックのハングですが,ここを登らずに右にトラバースしていくこともできます.
ドームの頭についたら後は明瞭な踏み跡に沿って進んでいくと5分ほどで縦走路に合流します.
まとめ
ドーム中央稜はどのピッチもアクセントのあるクライミングを楽しむことができる好ルートです.滝谷の中でもアプローチ含め入門的な立ち位置にあるルートなのではじめての滝谷におすすめです.3000mの稜線に位置する憧れの滝谷でクライミングを楽しみましょう!!
コメント