いつの時代もクライマーに愛されている瑞牆山ですが,そんな瑞牆山の楽しみ方のひとつにマルチピッチクライミングがあります.
瑞牆マルチというとトラッドルートや高グレードマルチの印象が強いですが,今回紹介するルートは瑞牆マルチの中でも入門的な立ち位置にある錦秋カナトコルートと山族’79黄昏ルートという2つのルートのいいとこどりをしたルートになります.
瑞牆らしくトラッドを交えつつ,要所ではしっかりとボルトが打ってある入門者でも安全に楽しむことができる好ルートです.加えて登攀後に頂上から見える十一面岩正面壁の絶景は次なら登攀意欲を駆り立てること間違いなしです!!
目次
錦秋カナトコ~山族’79黄昏ルート
瑞牆山にある十一面岩,この日本有数の岩壁には高難易度トラッドマルチである「アレアレア」や名クラシックルートである「ベルジュエール」などの様々なマルチピッチクライミングルートがあります.
「錦秋カナトコルート」と「山族’79黄昏ルート」は十一面岩左岩壁に位置し,1970年代に開拓された王道のクラシックルートで頂上のカナトコ岩に向かって登っていきます.いずれのルートも上質ですが,カナトコルートの1-2P目から黄昏ルートの3-5P目に継続することで三ツ星の好ルートになります.
グレードは5.8,5.10a,5.8,5.8,5.10bとなっており,5.10台がついてるピッチもフェイスにグレードがついているため全体的に手ごろな範囲に収まっています.全体的にクラックが多く,グレードも高めな瑞牆マルチにおいては入門的な立ち位置にあるルートです.頂上から見える景色も素晴らしく,目の前にある十一面岩正面壁は次の登攀意欲を駆り立てることでしょう.
アプローチ
十一面岩左岩壁に錦秋カナトコ/山族’79黄昏ルートはあります.みずがき山自然公園からKUMITEボルダーを経由して十一面岩末端壁までいきます.末端壁までのアプローチはリンクも参照にしてください!
末端壁からはガレ沢を10分ほど登り巨岩帯についたら左の樹林帯に向かいます.数分でベルジュエールなどが位置する十一面岩正面壁に突き当たります.正面壁の岩壁に沿って左方向にトラバースしていくと見晴らしのいい大テラスに到着しここからルートに取付きます.
ルート紹介
1P目 5.8 30m
テラスの左端から一段上がったところに逆くの字のフレークがあります.カムでプロテクションをとりながらフレークに沿って登っていきます.
フレークを越えたあとは途中灌木でプロテクションをとりながらやさしいスラブを登っていきビレイ点まで進みます.
2P目 5.10a 25m
ルート上の最高グレードは5.10bですが実際の核心は2P目かもしれません.フレーク状の浅いクラックにマイクロカムでプロテクションをとってから出だしのダイクへのレイバックでの立ちこみ,そのあとの数歩のスラブもフリクション頼りで侮れません.途中クラックが閉じていますが,この部分にはボルトがあります.途中からハンドジャムが決まるようになり一安心です.
3P目(山族3P目) 5.8 30m
宴会テラスと呼ばれる居心地のいいテラスから伸びる左上クラックを登ります.フレアしている部分もあり確実にプロテクションをとる必要があります.カンテの出たところでくの字状に折り返しておりコーナークラックを登っていきます.
4P目(山族4P目) 5.8 15m
易しいコーナーを引き続き登ると緩傾斜のバンドにでるため,ここから右側にトラバースしていきます.5mほどトラバースすると最後にカンテを挟んでのトラバースがありますがホールドもあまりよくなく,プロテクションも古いリングボルトなため緊張します.
5P目(山族5P目)5.10b 25m
最終ピッチは5.8程度のワイドクラックから始まります.クラック外のスタンスもあり難しくはないですがワイド慣れしてないとここがルートを通して一番つらいかもしれません.キャメロット5番があるとプロテクションも取れて安心です.
ワイドクラックを抜けあとはピナクルと壁を利用してステミングで体を上げます.ダイクに立ち込めたら溝にある浅いクラックを2mほど登ると終了点です.
終了点に立つと目の前に十一面岩正面壁がそびえたち「いつかはベルジュエールを!!」と登攀意欲を駆り立てられます.下山は50mのダブルロープなら3回の懸垂下降で山河微笑の取付きに降りられます.
まとめ
40年以上前に開拓された錦秋カナトコルート/山族’79黄昏ルートですが,2本のルートを組み合わせることで現代のルートにも負けない三ツ星ルートが誕生します.瑞牆マルチにおいて入門的な立ち位置にあるこのルート,初めての瑞牆マルチにいいかがでしょうか!
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