いつの時代もクライマーに愛されている瑞牆山ですが,そんな瑞牆山の楽しみ方のひとつにマルチピッチクライミングがあります.
瑞牆マルチというとトラッドルートが多くややハードルが高い印象を受けますが,「調和の幻想」はそんな瑞牆マルチの入門的な立ち位置にあるルートです.
クラックはもちろんのこと,スラブやフェイスなど多彩なクライミングを楽しめ,ナチュラルプロテクションの練習もできる.そして最後には十一面岩末端壁の頂上に立って瑞牆一帯を展望できる.そんな瑞牆マルチの最初の一歩にとてもおすすめな「調和の幻想」について紹介していきます!!
目次
瑞牆マルチ「調和の幻想」とは?
クライミングの聖地 瑞牆
瑞牆山と日本百名山に一つに数えられる名峰ですが,そんな瑞牆山一帯はいつの時代もクライマーに愛されているクライミングの聖地になっています.
瑞牆には実に600本を超えるルートがありますが,瑞牆でしか楽しめないクライミングのひとつにマルチピッチクライミングがあります(通称,瑞牆マルチ).十一面岩を代表とする巨大な岩壁を登るビッグスケールのフリークライミングは日本ではここでしか楽しめません!!
今回紹介する「調和の幻想」はそんな瑞牆マルチの入門的な立ち位置にあるルートで今も昔も多くのクライマーに登られています.
どんなルートなの?
調和の幻想は十一面岩末端壁の右端にあるクラックに沿って岩のピークを目指す5ピッチ150mほどのマルチピッチルートです.名前の通りフィンガーからワイドまでの多彩なクラックやスラブ,フェイスなどの様々なクライミングが絶妙に調和しています.
ルート中の最高グレードは5.10aと瑞牆マルチの中では比較的登りやすくなっていますが,クライミング要素以外にもルートファインディングやカムの設置などのナチュラルプロテクションの技術が求められます.またそれぞれのピッチもグレード以上に充実しており入門者だけではなく中上級者まで楽しめる好ルートです.
ギアは何が必要?
調和の幻想をはじめ瑞牆マルチの多くは終了点以外に人工物のないオールナチュラルプロテクションのルートになっています.また終了点も支点がなくて木でとる場合もあります.そのためカムやナッツなどのナチュラルプロテクションデバイス,支点構築のためのアルパインヌンチャクなどが必要となります.下記にまとめておきます.
共同装備として
- ダブルロープ(50m以上) 2本
- カム キャメロット #0.2-6×2(#5-6あたりは1セットでも可)
- ナッツキー
- アルパインヌンチャク 120㎝×5 60㎝×5
個人装備として
- ハーネス
- ヘルメット
- クライミングシューズ,チョーク
- 確保器,ビレイグローブ
- 安全環付カラビナ ×3
- 水,食料 …etc
カムに関しては#6は必須ではありませんが,大フレークを登る5ピッチ目であると心強いです.以前は15mほどランナウトして登るのが通常であったようですが,#6があることでランナウトを防ぐことができます.
また1ピッチ目,5ピッチ目のワイドクラックではザックがあると苦労します.ザックはなしで登るか,一つにまとめてフォローのみ背負うようにした方がいいでしょう.
調和の幻想(5.10a)ルート紹介
さて,前置きが長くなりましたがここから調和の幻想のルート紹介を行っていきます!!
アプローチ
十一面岩末端壁まではみずがき山自然公園の駐車場から4-50分ほどです.みずがき山自然公園の駐車場から遊歩道を15分ほど歩くと尾根上に大きなボルダーがでてきます.このボルダーを目印に尾根の右側に降り沢を渡ります.5分ほどで目印であるKIMITEボルダーが見えてきます.
KUMITEボルダーを右手に過ぎたあたりでクラック地獄エリアに行く道と分岐します.踏み跡に沿って急登を登ると尾根に上がります.尾根をしばらく進むと自然にガレ沢をトラバースする道になりその先にビバークできそうな岩小屋があります.
ここまでくればあと少しです.明瞭な踏み跡に沿って進みフィックスロープを登るとそこはもう十一面岩末端壁です.調和の幻想のとりつきは末端壁の右端の方にあります.
十一面岩のアプローチは瑞牆の岩場ではわかりやすいほうですがそれでも初めてだと迷います.ルートの詳細はもちろん,アプローチも写真付きで紹介してる「瑞牆クライミングガイド」は瑞牆クライマー必携の一冊です!
1ピッチ目 5.9+ 30m
1ピッチ目はワイドからハンドサイズに移り変わるクラックです.出だしは真っ向勝負のワイドクラックであり,ワイド登りが苦手な人は右側のフェイスに沿って登ることもできます.バチ効きのハンドジャムでリップを超えれば終了点です.
ホールドはしっかりしてますがパワフルなムーブが求められ出だしの一本だとやや大変です.
2ピッチ目 5.8 20m
2ピッチ目はフィスト~ワイドワイズの短いクラックを超えた先でスラブを登ります.後半のスラブは濡れていることもあり緊張します.左のコーナーにあるフィンガークラックを頼りに慎重に登ります.
2ピッチ目はルートファインディングにも注意が必要です.スラブを登った先で垂壁にぶつかりますが,ここで左のカンテ方向に大きく向きを変えトラバースをします.枯れ木で終了点を作成し取付きのほぼ真上でビレイします.
3ピッチ目 5.9 20m
3ピッチ目はフェイスクライミングです.階段状を登っていった先にフィンガークラックの走る垂壁があります.もちろんフィンガージャムをしてもいいですが,このクラックは主にプロテクション用で,その他にたくさんあるフェイスホールドを使って登るのが一般的です.
4ピッチ目 5.10a 30m
技術的な核心は4ピッチ目です.4ピッチ目は木登りからスタートします.2mほど登ったところでダイクに足が置けるので壁に移ります.ここからダイクの上を右側のフレークまでノーハンドトラバース...そのあとはフレークをレイバックして...今後はスラブを左の凹角クラックまでトラバースして...最後はハンド~フィストサイズのルーフクラックを登る...4ピッチ目は実に変化に富んだルートです.
5ピッチ目 5.9 45m
最終ピッチは精神的核心ともいわれるピッチで,以前は大フレークに沿って15mほどランアウトして登られていたこともあるようです.ですが,キャメロットの#6があればプロテクションになるため普通に登れます.
前半の大フレークをどのように使うかは発想次第!!ワイド登りをするもよし,レイバックをするもよし,フェイス登りをするもよし!大フレークを超えてからは傾斜は落ちますが苦しいワイドが続きます.
最後は気持ちのいいスラブを登って十一面岩末端壁のピークで終了です.
下降
下降は終了点から懸垂下降です.50mのダブルロープを目いっぱい使って3回の懸垂で地上まで下りられます.細かく残置スリングがあるのでシングルロープでも下降は可能かもしれませんがおそらく大変なのでダブルロープ必携です.
まとめ
はじめて瑞牆でマルチピッチクライミングをするのであれば絶対に「調和の幻想」がおすすめです!瑞牆マルチという新しい刺激がきっとクライミングライフを充実させてくれることでしょう!!
コメント