クラッククライミングの必需品であるカムデバイスですが,どのタイプのカムを選べばいいのかという疑問があります.ハンドサイズ以上のカムでは現状はキャメロット一択になっていますがフィンガーサイズ以下のカム(いわゆるマイクロカム)については未だ答えは出ていません.
今回はフィンガーサイズ以下のカム,いわゆるマイクロカムについて候補となりうるキャメロット,マスターカム,エイリアンの比較を行っていきます!!
目次
ハンドサイズ以上はキャメロット一択?
ボルトは使わずカムなどのナチュラルプロテクションを使用しながら岩の弱点であるクラックに沿って登っていくクラッククライミングは,クライミングの中でもかなり異質です.一時はスポーツクライミングに主役座の座を奪われていましたが,実は近年クラッククライミングに再度人気が集まりブームが到来しているんです.
クラッククライミングの中でも入門者が比較的とっかかりやすいのがハンド~フィストクラックです.これらのサイズのプロテクションについてはキャメロット一択となっているのが現状です.その理由については以下のリンクで解説しています!!
一方でフィンガーサイズ以下のカムについてはまだ統一した見解がありません.では,フィンガーサイズのカム,いわゆるマイクロカムはどのようにして選択したらよいのでしょうか?
マイクロカムの選択肢
2022年現在,フィンガーサイズ以下のカムの候補としてはキャメロットC4,Z4,ULマスターカム,エイリアンLEVOがあがります.これらについて紹介していきます.
キャメロットC4,Z4@ブラックダイアモンド
まずはハンドサイズでは王道のキャメロットです.フィンガ―サイズのキャメロットには通常のC4とマイクロカムに特化したZ4の2種類がありますが,C4は比較的大きめの#0.3-0.75までの規格しかなくそれより小さいものはZ4のみになります.もともとはX4というモデルがありましたが,2020年にモデルチェンジされて以降は現在のZ4がキャメロットのマイクロカムの主力となっています.C4とZ4を比べるとZ4の方がヘッドがコンパクトになり,さらにステムの柔軟性が高くなっています.
キャメロットは他の2つとは異なり2軸のカムであり1つのサイズで対応できるレンジ幅が広いことが特徴となっており使い勝手はとてもよいです.
ULマスターカム@メトリウス
メトリウス社のマスターカムもマイクロカムでは人気があります.1軸のカムであり「座りがいい」と表現される安定性があります.一般的にはULという軽量化されたモデルが選択されるでしょう.親指をかけるループがないのが特徴でその分他のカムより若干軽めになっています.
エイリアンLEVO@FIXE
エイリアンは昔から人気のある1軸のマイクロカムで何といってもその柔軟性が特徴です.キャメロットZ4がないころはこのエイリアンの柔軟性は唯一無二の存在でした.ほかの2つと比べて価格が高めだったり,日本では流通量が少ないのがやや難点です.
エイリアンについているスリングはほかの2つよりも長めになっており,追加のスリングを使用せずに簡単に長さ調整ができるようになっています.
マイクロカム徹底比較
ここまでキャメロット,マスターカム,エイリアンについてその特徴を簡単に紹介してきました.ここからはさらに深堀りしてマイクロカムの選び方を考えていきます.
レンジ
C4=Z4>MC≒AL
レンジについては以下の図にまとめています.前述のようにキャメロットは2軸ということもあって特に#0.3~0.75あたりはひとつのサイズで広く使えるようになっています.
マスターカムとエイリアンを比較するとエイリアンの方が重なりが多い印象を受けます.マスターカムは重なりが小さい分,カム選択をより厳密にやらなければいけないかもしれません.
機能性
何をもって機能性とするかは悩ましいですが,ここでは①ヘッドの大きさ,②ステムの柔軟性,③ヘッドの形状としてみます.
①ヘッドの大きさ
MC≒Z4≒AL>>C4
ヘッドの大きさについてはキャメロットC4がずば抜けて大きく,他はMC>Z4>ALとなっていますがこの3つには大きな違いはなさそうです.ヘッドが大きいと安定感はありますが,きれいなクラックでないと決めにくいので実用性を考えるとコンパクトなヘッドの方がよさそうです.
②ステムの柔軟性
AL≧Z4>MC>>>>>C4
ステムの柔軟性についてはエイリアンの圧勝です.Z4も負けてはいませんが横向きの柔軟性はやや劣ります.マスターカムも前者2つには劣りますが,90度以上は曲がるので実用的には問題なさそうです.
③ヘッドの形状
???
マスターカムとエイリアンではヘッドの形状が若干異なります.エイリアンの方が浅い部分にカムの刃のとがった部分があります.この違いによって同じクラックでも若干おさまりが違ってくる可能性があります.
重量&耐荷重
次に重量と耐荷重について考えていきます.今回はクラックの幅が10mm,20mm,30mmの場合に設置できるカム同士を比較していきます.
10mmのクラックでは4つのカムがセット可能ですがいずれも耐荷重は5kNと小さくなっています.耐荷重5kNというのは落ち方によっては支点にかかりうる力なのでこのサイズのクラックに設置したカムでは安易に落ちれないことがわかります(それでもないよりはましですが...).
20mmのクラックでは実に11ものカムがセット可能です.基本的にカムが大きくなるほど耐荷重は大きくなります.C4では耐荷重は大分大きくなりますがその分重量も増してきます.
30mmのクラックでは7つのカムがセット可能です.耐荷重はいずれも10kNを超えておりよほどの落下でない限り安心です.それに伴い重量も増えてきますがエイリアンは比較的軽めになっています.
重量と耐荷重については単純な比較は難しそうですがC4は重めに設計されており長いフィンガールートでは使い勝手は悪そうです.耐荷重についてはカムそのものの強度よりもセットの仕方で大きく変わってくるため,特にフィンガークラックではクラックの形状にあったカムを選択することの方が重要かもしれません.
価格
Z4=MC>C4>>AL
最後に価格ですがマイクロカムは通常サイズによらず同じ価格になっています.
- キャメロットC4 7,500円+税
- キャメロットZ4 7,000円+税
- ULマスターカム 7,000円+税
- エイリアンLEVO 12,800円+税
結論!!
1セットだけ買うならキャメロットZ4
2セット買えるならキャメロットZ4+ULマスターカム
理由)
いろいろ比較するとレンジ幅,ヘッドの大きさ,ステムの柔軟性などの点からキャメロットZ4の使い勝手が一番よさそうです.ただ1軸と2軸の違いもあるのでZ4が安定してきまらない場所には1軸のULマスターカムを使ってみるのがいいでしょう.エイリアンとの違いは価格,手に入りやすさなどが一番です.ただしULマスターカムはレンジの重なりが小さいのでカム選択には他のものより気を使うかもしれません.
まとめ
いかがでしょうか.マイクロカムと言われるフィンガーサイズのカムについていろいろ考察してきました.この記事によって,あなたのクライミングライフがより充実すれば幸いです.
Let’s enjoy climbing!!
コメント