リードクライミングをする上で必ず必要になってくるのがプロテクションです.スポーツクライミングのルートではボルトが打ってあることもありますが,トラッド(クラック)クライミングやアルパインクライミングではボルトがなくナチュラルプロテクションを用いる場面がたくさんあります.
ナチュラルプロテクションの中でも,回収が可能で比較的使いやすいのがクライミングカムになります.クライミングカムについては以前に下記のページで紹介していますが,今回は多くのクライマーが悩む,キャメロットC4にするべきか,ウルトラライト(UL)にするべきかについて考えていきます.
カムを買うにあたってキャメロットC4にするかULにするか悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください!!
目次
クライミングカムとは?
リードクライミングでは墜落したときに身を守るためにプロテクション(中間支点)をとりながら登っていきます.スポーツクライミングでは岩に打ってあるボルトにプロテクションをとりながら登っていきますが,ボルトがないルートもたくさんあります.そのようなルートでは岩や木など自然の構造物を利用して自分で中間支点を作成してプロテクションをとる必要があります.これをナチュラルプロテクションといいます.
※クライミングシステムについては下記のページで紹介していますのでよくわからないという人は参考にしてみてください※
ナチュラルプロテクションには,ハーケンや,木や岩角の利用,アイススクリューなどいくつかありますが,岩にできた割れ目(クラック)を利用するのがカムデバイスになります.
キャメロットC4とキャメロットウルトラライト(UL)の違い
クライミングカムの中で一番人気なのはブラックダイアモンド社のキャメロットシリーズでしょう.キャメロットシリーズの中でもキャメロットC4とウルトラライト(UL)は同サイズのものが展開されており,この2つのうちどちらを選んだ方がよいかは多くのクライマーを悩ませています.ここではこの2つの何が違うのかを見ていきます.
性能比較
下の表はブラックダイアモンド社が発表しているキャメロットC4とウルトラライトの性能を比較したものです.ULは#0.4~#4までのサイズ展開がされています.
いずれのサイズもレンジは同じです.違いがあるのは重量と耐荷重になっています.ULは重量を減らした分,耐荷重も減っているというのが全体的な傾向です.ちなみに重量差はだいたい20g程度となっており,これは大きめのいちご1粒分の重さのようです...
実際に触ってみて
次に実物の比較をしていきます.
まず歯の部分につながるワイヤー部分ですが,右のULの方が大分細くなっています.ULではこの部分が切れたということも聞いたことがあります.この部分自体は耐荷重にさほど影響していませんが,切れると取り扱いにくくなるうえ修理が必要になります.
岩の食い込む歯の部分はULもC4も大きく変わりませんが,ULの方が側面が多く肉抜きされています.
ステム部分が一番大きく違います.C4はワイヤーですが,ULではダイニーマ製になっています.ダイニーマ製の分ULの方が一回り大きくなっています.
最後に上の2枚はステム部分を横から見た写真ですが,C4はワイヤーの分横の力にも強いですが,ULではC4よりも大きく曲がります.C4では安心感はありますが,ULではさらに大きな力が加わったときにはステムが折れてしまいそうな不安感がありました.
アルパインクライミングとトラッド(クラック)クライミングの違い
カムを使うシチュエーションを多きく分けるとアルパインクライミングとトラッドクライミングの2つになります.カムを選ぶにあたってこの2つのクライミングの性質の違いを考慮する必要があるため簡単にまとめておきます.
まずアルパインクライミングでは,カム以外のプロテクションをとれる場面があります.そのため持っていくカムの量はトラッドクライミングと比較すると少なくなります.さらにアルパインクライミングでは「落ちない」ことが前提となっているためルート自体の難易度はそれほど高くなく(一般的には),プロテクションをとるときにある程度の余裕がある場合もあります.一方でハードな行程の場合には,軽量化は最も優先されます.
一方でトラッドクライミングの場合には,同じサイズのカムを複数個持っていくことはよくあることで,ルート自体の難易度はアルパインクライミングよりも高くなります.プロテクションはほぼカムデバイスになります.
このような違いを踏まえた上で次の項でC4とULをどのように選んでいくかをまとめていきます.
結局,C4とULってどっちがいいの?
C4をおすすめするシチュエーション
C4がULよりも優れている点は,
- 価格が安い(30%ほど)
- 耐荷重が優れている(特に側面からの)
の2つになると思います.そのため,はじめてカムを購入する場合にはとてもとっつきやすくなっています.カムは1つだけ購入しても役には立たず複数個買う必要があります.金銭的に制限がある人は最初に買うカムはC4で全く問題がないと思います.
またC4は側方への荷重に対してULよりも安心感があります.そのためトラバースルートや斜上するクラックではC4の方がおすすめできます.
ULをおすすめするシチュエーション
ULがC4よりも優れている点は,なんといってもその軽さです.軽さが有利に働くのは
- カムをたくさん持っていくような長いトラッドルート
- 少しでも軽量化を目指す厳しいアルパインルート
の2つに要約されると思います.C4とULの重さの違いは1個1個はいちご1粒ほどで大きな差はありません.ですが,塵も積もれば山となります.カムが沢山必要なルートではULの恩恵を受けることができるでしょう.
またカムを沢山持っていかなくても,厳しいアルパインクライミングでは1gでも軽量化を目指します.そのようなルートではいちご1粒程度の差も見過ごすことはできません.逆にある程度余裕のあるルートでは必ずしもULでなくてもよいかもしれません.
まとめ
人気のカムデバイスであるキャメロットC4とULについて考えてきました.どちらもいい点があるのでクライミングスタイルに合わせて選んでいただければ幸いです.
ちなみに筆者は1セット目はC4,買い足した2セット目はULにしています...
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