クライミングシューズの選び方について考える.初めてクライミングシューズを購入する人にはぜひ見てもらいたい.合わせてシューズのレビューも行う.
本格的な登山をはじめるようになり山岳会に入ったタイミングでアルパインクライミングを始めた.並行して日々のトレーニングとしてボルダリングジムに通いだしたのが1年半ほど前のことになる.とはいってもコロナの流行もあって途中とぎれとぎれになっていた.現在は週に1-2回ボルダリングジムに通って都合がつく週末は岩場に行くようにしている.そんなこんなでクライミングシューズは順調にすり減りこの度2足目を購入した.
筆者の情報
・30代男性
・足のサイズは28.5(登山靴)
・2020年2月よりクライミング開始
・ボルダリング4級,1回/週
・外岩歴10数回(フリー,アルパイン)
クライミングシューズの選び方を考える
インターネットで検索するとクライミングシューズの種類が沢山あることに驚く.しかし,靴という特性上実際の店舗に行って履いて選ぶのが好ましいのだが,いざ店舗に行ってみるとその品数の少なさに驚く.そんな中自分に合ったシューズを選ぶ際にはいくつかのポイントがあるので自分なりにまとめてみる.
- サイズ
- 留め具(スリッパ型,ベルクロ,シューレース)
- 形状(フラット,ダウントゥ)
- 価格
- ブランド
- ソールの種類,硬さ
サイズ
皆さんご存じだと思うがクライミングシューズは実際の足のサイズでは選ばない.
小さなスタンスに乗るために指先を曲げた状態でいる必要があるため,通常は実際のサイズよりも0.5-1.5cmほど小さいサイズを選ぶことになる.ちなみに多くはcmではなくヨーロッパの規格で「EU40」などと表現することが多い.もちろんcmでの評価もある.
図1.のように指が少し曲がるくらいの方が小さなスタンスに効率よく立ち込める.ただこれくらいのサイズになってくると足の痛みが伴う.ちょうどいいサイズとしては履いた時は痛くないくらいがいいだろう.しかし,履いているうちに徐々に痛くなってくるため多くのクライマーはこの苦悩と戦っている.
筆者の足のサイズは28.5㎝であり本当のサイズを選ぶとEU 44.5ということになるが,実際にクライミングシューズを選ぶときはEU 43-43.5(27-27.5cm)くらいを選ぶ.
留め具(スリッパ型,ベルクロ,シューレース)
留め具については実際は3パターンあるのだが,筆者の経験ではスリッパタイプを履いている人は見たことがない.ベルクロかシューレースで選べばいいだろう.一般的にはマルチピッチやアルパインクライミングをやる人はシューレースの方がいいといわれている.たしかにボルダリングジムではベルクロが,外岩ではシューレースが多い傾向にある気がする.
形状(フラット,ダウントゥ)
フラットは通常の靴と同じような形状である.ダウントゥはつま先が下がっていてピンポイントでホールドに体重をかけやすい.一方でスメアリングなどの記述はダウントゥのシューズでは難しそうな印象を受ける.筆者はダウントゥは経験はないが痛そうだなと思っていつも見てる.
ソールの種類,硬さ
ソールは靴の裏のゴムの部分である.ソールのメーカーは数種類ありその中でもやわらかい,硬いなどのブランドの違いがある.面白いのはシューズ自体のメーカーが違っても実はソールが同じだったりすることもある.ここは重要な点であるが初心者はあまり気にしなくてもいいかもしれない.2足目以降を選ぶときに用途に応じて選択すればいいだろう.
クライミングシューズは良くも悪くも選択肢が非常に多いというわけではなく,留め具や形状,ソールなどはそれぞれ別に選ぶことはできない.そのシューズ自体のコンセプト(室内,ボルダリング,マルチピッチ,クラック等々)があってそれに応じた構造をしている.そのため総合的に判断して自分の嗜好にあったものを選ぶ必要がある.
クライミングシューズ レビュー
①SCARPA ORIGIN EU 43.5
クライミングを始めた当初はボルダリングジムでのレンタルであった.その後,外岩に行く機会があり自前のシューズを購入することになった.一足目ということで今後どういうクライミング人生を歩むかもわからなかったので,求めたのは値段とオールマイティさであった.その点ORIGINは元々入門用シューズとして作られているためちょうど良かった.フラットトゥで留め具はベルクロ,窮屈感は全くなく初心者が履きやすい構造になっている.ソールはSCARPA独自のVision5mmという固めで耐久性のあるものになっている.
最初履きだしたときは長時間履いていると足が痛くなってくるが,回を重ねるごとに足になじんでくる.最終的にはマルチピッチも履きっぱなしで行けるくらいになじんだ.
このシューズ何よりのおすすめポイントはこのパフォーマンスにして価格が11,000円(税込み)と非常にお手軽なところである.そういった意味でも最初の一足にはぜひおすすめしたい.
そんなORIGINであったが外岩を含めて1年3か月ほど履くと寿命がきた.ソールが摩耗してきたのだ.
それなりにフリクションは効いたためこの状態でもクライミングを継続することはできたが,ソールがすり減るにつれて小さいホールドに乗るのが難しくなってきたたため2足目を購入することとした.そして非常に足になじんだこのシューズはリソールして練習用とすることとした.そのため2足目のコンセプトは外岩,本チャン,マルチピッチ用ということになる.
ちなみにリソールはクライミングシューズを取り扱う登山用品店に持っていても対応してくれるがリソール専門店というものもある.筆者はイボルブジャパンに依頼をした.
②SPORTIVA TC PRO EU 43
2足目のコンセプトは外岩,本チャン,マルチピッチ用であった.条件としては①硬いソール,②シューレース仕様,③履き心地であった.選択肢としてはSPORTIVAのTC PRO,KATANA LACES,MIURA,TARANTULA,SCARPAのMAESTRO MED,ファイブテンのスパイア,アナザシあたりに狙いを定めていた.しかしアルパイン嗜好ということを考えるとTC PROが非常に魅力的であった.
外岩でも十分な威力を発揮する硬いソール,長時間履いていても苦痛に感じないシューレース仕様,そして何より他の製品と違うのはクラックでも踝を痛めないミドルカットの仕様.
アメリカのクライマーであるトミー・コードウェルの名前をとって「TC」ということであるが,youtubeでトミー・コードウェルがTC PROを履いてヨセミテのビッグウォールを登っている動画をみてTC PROに即決した.
しかしここで問題が発生した.筆者のサイズであるEU 43.5のシューズが登山用品店に行っても置いていないのだ.多くの店ではEU 41くらいが最大であった.最終的に東京のカモシカスポーツ本店にいってようやくTC PROのEU 43を見つけたのだった.
ORIGINを履いているときはEU 43.5であったためEU 43というサイズはやや不安があったが履いてみると今までとかわらなくくらいのサイズ感.店員に効いてみるとクライミングシューズにおいてはスカルパはやや小さめの設計とのことであった.この一言によって不安はなくなり自分の足の間隔を信じTC PROを購入した.
TC PROと選択肢に上がった他のシューズとの違いを考えてみたい.
まず同じSPORTIVA製のKATANA LACESとMIURAはややダウントゥ気味だという点.そのためマルチピッチにはやや足が窮屈かもしれない.TRANTULAはベルクロ仕様となっている点とソールが粘性が高いFriXion Black 4mmとなっておりどちらかというと入門用シューズに近いかもしれない.SCARPA製のMAESTRO MEDは形状もフラットで,ソールもTC PROと同じ硬めのビブラムXSエッジ 4mmとなっており一番近いものとなっている.ここの二つは履き心地で判断すればよいだろう.ファイブテン製のものはソールがSTEALTH製となっておりこの点については一度履き心地を確かめてみたい.
おわりに
初心者向けのクライミングシューズの選び方と筆者がクライミングシューズを選んだ経緯について述べてみた.今後さらなる経験を踏まえて知識を更新していきたい.
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