一粒の麦|オールナチュラルプロテクション・オールクラックの名マルチピッチルート

トラッドクライミング
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 初心者向け/入門者向けののマルチピッチクライミングが多い小川山と比べると,瑞牆マルチはトラディショナル(トラッド)クライミングと言われるクラック主体でナチュラルプロテクションで登るルートか,ボルトがあるけれども高難易度のルートが特徴的です.中でもこの一粒の麦というルートはルート中に1本のボルトもなく終了点含めてすべてナチュラルプロテクションで登ることができるトラッドクライミングが主体の瑞牆の中でも特異的なルートになります.もちろんルートの質自体も良好で,とくに2P目,6P目はそれ単体でも三ツ星となるような好ルートです.

 今回はそんな稀有な存在であるオールナチュラルプロテクション・オールクラックのルート「一粒の麦」を紹介してきます.

一粒の麦とは?
  • クラック主体のマルチピッチルート
  • 終了点含めルート内には1本のボルトもない
  • 2ピッチ目,6ピッチ目はショートルートととらえても三ツ星の質

一粒の麦

 一粒の麦は十一面岩奥壁という岩場にあるルートですべてのピッチがクラックで,フィンガー~ワイド,チムニーサイズまで楽しむことができます.このルートの最大の特徴は終了点も含めてルート上に1本のボルトもないということです.クラックのルートでも終了点にはボルトがあるというのが一般的ですがこのルートは違います.トラッドクライミングのスタイルが主体の瑞牆山のマルチピッチルートでも1本もボルトがないというのは一粒の麦一刀の2つしかないと思います.なんならトラッドクライミングの本場であるヨセミテにもそんなに多くはありません.一刀も素晴らしいルートですが,5.11台のピッチも多く取付くにはそれなりの技量がいることを考えると5.10台におさまっているこの一粒の麦というルートはとても貴重です.

 オールナチュプロ・ボルトレスという点に目が行きがちな一粒の麦ですが,その内容も目を見張るものがあります.特に雷が落ちたような1筋のクラックが続く2P目と,すっきりとしたコーナーが延々と続く6P目はショートルートととらえても一級品です.

ルート紹介

アプローチ

 一粒の麦へは植樹祭広場の駐車場から1時間半弱でたどり着きます.ベルジュエールがある十一面正面壁を通り過ぎ,正面壁の下降路である急登を登ります.しばらくすると右側の森の中に左右に連なる岩が出現するのでこの岩に沿って踏み跡をたどります.目印にテープがあり従ってさらに10分ほど進んだところにあるフィックスロープを登ると白砂のテラスと呼ばれる開けた場所に出ます.白砂のテラスに荷物を置き,先ほどのフィックスロープのあたりから岩壁に沿って左側に進むと踏み跡の付いたバンドがあります.ここが一粒の麦の取付きです.

白砂のテラス
取付きへのバンド

1P目 5.9 30m

 取付きバンドから易しい岩場を一段上がると短いハンドクラックがあります.これを抜けると目の前には長く美しい2P目のクラックがもう目の前にあります.

2P目 5.10b 30m

 このルートのハイライトです.一枚のすっきりした岩壁にはいった一筋のクラック,登攀意欲がわいてきます.

 最初は快適なハンドから始まりますがフィストを経てオフウィズスへと徐々に広がります.加えてクラック自体も波打つフレーク状になってくるため通常のクラック登りでは苦労します.ワイドになった部分は体をクラックの外に出して思い切ってレイバックで登っていきましょう.高度感はありますが,ホールド,スタンスともに豊富で気持ちよく登ることができます.

3P目 5.6 40m

 3P目は短いコーナークラックを登りピナクルの上に出たら右方向のチムニーをクライムダウンします.

4P目 5.6 25m

 右側の土のルンゼを登ればそのまま5P目の取付きですが,左のチムニーを登ると冒険的なクライミングを楽しめます.体がすっぽり入るサイズでプロテクションは取れませんが落ちることはないでしょう.

5P目 5.10a 30m

 5ピッチ目の最初はルンゼの右壁にある汚いハンドクラックを登ります.簡単なフェイスを登ってテラスに上がるとカンテを挟んだ左側にワイドサイズのダブルクラックがあります.どちらも同じくらいのグレードなので気に入った方を登りましょう.

6P目 5.10c 35m

 2P目と並んで一粒の麦のハイライトです.2P目とこの6P目を登るだけでも一粒の麦に来る価値はあります.

 5P目の終了点からブッシュ帯を少し歩くと,6P目の取付きですがいきなり核心です.ブロック状のカンテを挟んで左右に2本あるクラックをどう使って登るかが肝になります.抜けもジャミングをするのか,ホールディングをするのか,あるいは草をつかむのか,,などいろいろ考えさせられます.コーナーに入ってからはハンドがよく効き,長くきれいなクラックを頂上まで登っていきます.前述のように終了点のボルトはないのでカムを使って構築する必要があります.

まとめ

 トラッドクライミングの聖地瑞牆においても特異的な存在であるオールナチュラルプロテクション・ボルトレス・オールクラックルートである一粒の麦.クラッククライミングをやっている人は外せない1本です!!

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