前穂高岳北尾根Ⅳ峰正面壁 北条=新村ルート|奥又白の名クラシックルートを登る

アルパインクライミング
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 穂高連峰は日本三大岩場に数えられる岩登りの聖地ですが,前穂高岳東面の岩場,通称奥又白の岩場は滝谷,屏風岩と並んで三大岩壁として人気のあるエリアです.奥又白の岩場は東面にあり明るい雰囲気で気持ちのいいクライミングを満喫することができます.

 今回紹介する北条=新村ルートは前穂高岳北尾根のⅣ峰正面壁にあり,なんと1933年に初登されたまさにクラシックルートになります.その内容は90年経つ今でも色褪せることのない素晴らしいものであり,すべてのクライマーに登ってもらいたい王道ルートです.

北条=新村ルート
  • 日本50名ルートに選ばれる王道のクラシックルート
  • 3000m近い標高でアルペン気分を楽しめるロッククライミング
  • 東面の明るく気持ちのいい岩場
  • ベースの奥又白池はお花畑に囲まれた最高の雰囲気

奥又白の岩場

 穂高連峰は日本三大岩場に数えられる岩登りの聖地ですが,前穂高岳の東面には穂高有数の大岩壁である前穂東壁,北壁,北尾根Ⅳ峰があります.これらの岩壁は奥又白池をベースとして登られることが多く総称して奥又白の岩場と呼ばれています.

国土地理院地形図より改変

 奥又白の岩場は3000m峰である前穂高岳の東面にあり,滝谷とも屏風岩とも違った雰囲気のクライミングを楽しむことができます.東面ゆえの明るさ,眼下に広がるお花畑や奥又白池はまるで外国で登っているかのような気分を満喫できます.一方で,ベースとなる奥又白池から尾根,ガレ沢,雪渓をつめて3000mのピークを目指すためアルパインクライミングの総合力が問われるエリアになります.

北条=新村ルート

 北条=新村ルートは前穂高岳北尾根Ⅳ峰正面壁にあり,奥又白の岩場で一番人気のルートです.アルペン気分を味わえるアプローチ,しっかりとした岩,ピリッとしびれる核心のハング,稜線に抜ける爽快さなど人気の秘訣は沢山あります.初登はなんと今から90年前の1933年ということなので驚きです!核心部のハングは以前は人工登攀が必要でしたが,現在は5.10台前半程度のフリークライミングで登られることも多くなっています.

 北条=新村ルートは2022年に出版された日本50名ルートにも入っている名クラシックルートです.ルートのトポだけではなく歴史的背景も知ることができるおすすめの一冊です

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アプローチ

 北条=新村ルートがある北尾根Ⅳ峰へは涸沢か奥又白池をベースに登ることができます.涸沢からアプローチする場合にはⅤⅥのコル経由で2時間ほどかけて奥又白池に向かう必要があります.

 奥又白池からは奥又尾根を最初に登ります.踏み跡に沿って30分ほど登ると慰霊碑,ケルンがあるのでこれらを目印に尾根から降りて沢筋に下降します.

奥又尾根
目印のケルン

 尾根を降りてからはⅣ峰の手前に見えているB沢・C沢の出合に向かってトラバースしていきます.踏み跡ははっきりしないので通過しやすい所を探して歩きましょう.A沢は非常にガレているので落石に注意しながら進む必要があります.

本谷のトラバース
A沢の恐ろしいトラバース

 B沢C沢は8月まで雪渓が残るのでアイゼン・ピッケルなどの装備は必携です.スノーブリッジやシュルンドなどに注意しながらC沢に入ります.C沢は巨大なチョックストーンが目印です.チョックストーンの手前の踏み跡から左岸に上がります.このままC沢をつめると前穂東壁・北壁にアプローチできます.

B沢C沢出合
CS手前の踏み跡

 C沢左岸に上がってからは草付き帯のルンゼあるいは岩の小尾根を登っていきます.小尾根を上部までつめ,岩壁基部の悪い草付き帯をトラバースしていくとT1テラスに到着します.

 T1テラスから右に甲南ルートの取付きが,左に北条=新村ルートの取付きがあります.松高ルートは少し戻り左上する草付き帯を登っていきます.

装備

  • 50mダブルロープ
  • アルパインヌンチャク 120cm 6本,60cm 9本
  • キャメロット #0.3, 0.4, 0.5, 0.75, 1, 2
  • ナッツ 3,4,5,6
  • 捨て縄,ハーケン(敗退用)
  • 個人登攀具(ハーネス,ヘルメット,クライミングシューズ,確保器,,,)
  • アイゼン,ピッケル

 比較的まっすぐなラインですが,アルパインなのでそれなりにトラバースする場面も多くダブルロープ推奨で長さは50mあれば十分です.ルート上は残置のハーケンが沢山ありますが,古いものが多くナチュラルプロテクションは一式必要です.またアプローチには遅くまで雪渓が残るのでアイゼン,ピッケルが必要なことが多いです.

 とはいえ冬山とは違うので軽量化したアイゼン,ピッケルで大丈夫です!!軽量アイゼンとしてはブルーアイスのハーファング,軽量ピッケルとしてはペツルのガリーがおすすめです!!

ルート紹介

 ルートは全5Pで構成されており,1-3P目は草付きを交えて脆い岩を登る,まさに日本のアルパインクライミングです.核心部の4,5P目は初登から90年たった今なお楽しめる内容となっています.

1P目 Ⅳ 30m

 北条=新村ルートの1P目はT1テラス左の凹角から登り始めます.出だしは草付きの凹角で途中でカンテにでてフェイスを登ります.30mほど登ったところにあるレッジでピッチを切ります.50m目いっぱいロープを伸ばすとうまくピッチが切れないので早めに切る方がいいでしょう.

2P目 Ⅲ 30m

 2P目いなるとブッシュは減り岩登りが主体になってきます.階段状のフェイスで自由にライン取りができますが,右上n

 2P目いなるとブッシュは減り岩登りが主体になってきます.階段状のフェイスで自由にライン取りができます.右上に見えているチムニーを目指して登っていきます.このピッチも30mほどで終了点に使えそうな残置支点があるので早めにピッチを切ります.

3P目 Ⅳ+ 30m

 3P目は取付きからも判別できるブッシュの少ないすっきりとしたチムニーを2つつなげて登っていきます.全体的に岩がもろいのでしっかりと確認しながら登りましょう.30m登ると広いハイマツテラスに出るのでここで北条=新村ルートの前半が終了です.

4P目 5.10- 25m

 ハイマツテラスからは北条=新村ルートの核心にしてハイライトの4P目がはじまります.もともとは人工登攀のルートであり,現在でもアブミを使ったA1で登られることも多い凹角にある3つのハングを越えていきます.

 1つ目のハングは容易ですが,2つ目のハングからはてこずります.残置の支点にはスリングもかかっており人工登攀をしたくなりますが,ホールド・スタンスは豊富にあるのでしっかりとムーブを組み立てることができれば5.9程度のグレードで登ることができます.

 3つめのハングはルート全体を通しての核心でさらに手強くなります.大きなハング下を右にトラバースしていきます.比較的しっかりとした残置の支点は沢山あり,クラックの発達もよいのでプロテクションには困りません.ハングを抜けた跡のフェイスのトラバースもなかなか緊張します.5mほどトラバースした先にあるピナクルのあるテラスでピッチを切ります.

5P目 Ⅳ+ 30m

 核心ピッチを抜けて一息つけますが,5P目も高度感が強く緊張します.ピナクルのテラスからさらに数mトラバースをした先で脆そうなホールドを使ってカンテに出ます.4P目が技術的な核心なら5P目は精神的な核心かもしれません.

 カンテに出た後はやさしくなりますが全体的にもろく緊張は続きます.ロープを30mほど伸ばしてハイマツのあるテラスにでるとルートの終了点でようやく安心できます.

終了点~前穂北尾根Ⅳ峰

 終了点からは薄い踏み跡のあるブッシュ帯を露岩を目印に稜線を目指して登っていきます.うるさいブッシュ帯を抜けると浮石が多くガレた緩傾斜帯に入りあとは北尾根の稜線を目指して登っていきます.

下降路

 北尾根Ⅳ峰正面壁を登り終えたとは北尾根を下降してⅤⅥのコル経由でベースキャンプまで戻るのが一般的です.

 ⅤⅥのコルはビバークできるような広いスペースがあります.奥又白側にある著明な踏み跡に沿って下降していきます.しばらく下降すると緊張するような悪いザレ場のトラバースがあります.お助けひもがあるのでこれを使いながら通過できますが,リングボルトで支点が取れるのでロープを出すのもありかもしれません.

 その後,踏み跡に沿って尾根に出たり,ブッシュ帯を進んだり,小垂壁をクライムダウンしたりしながら進み,ガレ沢のトラバースを越えると本谷の樹林帯を進んでいきます.初見でルートファインディングもしながらだとⅤⅥのコルから奥又白池まで2時間弱かかりました.

まとめ

 前穂高岳北尾根Ⅳ峰正面壁にある日本を代表するクラシックルートである北条=新村ルートについて紹介してきました.ロケーション,内容など初登から一世紀近くがたった今なお色あせない名ルートです.ぜひ挑戦してみてください!

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